ジェニファー・ロペス起用に不満の声
61回目を迎えたグラミー賞2019で行なわれた、ジャクソン5やダイアナ・ロスをはじめとした大物黒人アーティストを世に送り出してきた音楽レーベルのモータウン(Motown)を称えたトリビュート・ライブ。
グラミー賞側はパフォーマーとしてジェニファー・ロペスを抜擢したのだが、著名なブラックミュージックを世に送り出してきたモータウンのトリビュートをラテン系シンガーが行なうことや、ダンスミュージックが多いジェニファーがソウルミュージックとポップを融合したモータウンのトリビュートを行なうのではイメージが合わないことなどから、そもそもこの起用には当初から批判が相次いでいた。
アワード当日にSNSで炎上
そしてその批判が、パフォーマンス中にSNSで噴出。
「黒人女性がいるのに、ダンスポップの歌姫であるJ.Loがモータウンのトリビュートをやるってどういうこと?」
「この瞬間に輝ける女性R&Bシンガーが1000人くらいいるのにジェニファー・ロペスにモータウンの名曲を歌わせるなんて」
「J.Loは偉大なアーティストなのは間違いない。ただ正直、これは彼女がやるべきパフォーマンスじゃないよね」
元ダンサーであるジェニファーのエネルギッシュなダンスも火に油を注ぎ、「サルサダンスはモータウンじゃない!」などといった声が。なかには、「ミシェル・オバマが残って、モータウンのトリビュートをやればよかったのに」と、この日グラミー賞にサプライズ登場したミシェル・オバマ元米大統領夫人の名前を持ち出す人もいた。
ちなみにこの日のパフォーマンスには、モータウンの設立に関わったブラックミュージックのレジェンドであるスモーキー・ロビンソンも参加。スモーキーはグラミー賞のプレパーティーで米Varietyのインタビューにこたえ、「モータウンの音楽はみんなの音楽だ」とジェニファー起用を擁護した。
追記:日本時間の2月13日に、モータウンの副社長スモーキー・ロビンソンがインスタグラムを更新してこうジェニファーを擁護した。
「素晴らしい才能にあふれた世界的に有名なスーパースターであるジェニファー・ロペスがモータウンの音楽に愛とサポートを示したことを批判するみなさんに、考える材料を与えよう。モータウンが始まった日、ベリー・ゴーディはその場にいた私たち5人にこう言った。『自分のレコードレーベルを設立する。全員のための音楽を作り、世界が楽しめる良質な音楽を世に送り届けよう』。そして神の思し召しと努力、意志の強さにより、それを達成することができた。
世界中のすべての人種の子供たちが、モータウンの音楽を愛してくれた。ダイアナ・ロスや、テンプテーションズや、マイケル・ジャクソンなどのパフォーマンスをマネしてね。あの時も現在も親は子供にモータウンの音楽を聴かせている。なのに君たちはここにきて、モータウンを黒人のための音楽という範囲まで狭めてしまうのかい。モータウンのイメージを守るためなんて言いながら。君たちはそうすることで、逆に我々を100年分も後退させているよ。
モータウンを愛しているなら、モータウンが多くの人に影響を与えたこと、人種の垣根を超えたこと、ジェニファーのようなアーティストが批判を受けてもなおトリビュート・パフォーマンスを行なうほどモータウンを愛してくれていることを嬉しく思ってほしい。それこそ、愛とリスペクトじゃないか。
ほかの民族がモータウンのトリビュートを行なうことを快く思わない君たちは、ティーナ・マリーや、レア・アースや、我々が抱えるその他の白人アーティストも嫌いだってことになるね。
ヘイトをやめなさい。モータウンは人々を結束させた。バラバラにさせたのではない。自分に向けられたくない偏見を他人に向けてヘイトを拡散する人たちは、モータウンを愛する者だと名のらないでくれ。
J.Loは素晴らしかった。そしてモータウンは彼女を愛している。モータウンは黒人、白人、ヒスパニック、アジア、女性、男性でできた家族で、だからこそ美しい。我々が雇用していた人間にも多様性があった。こういった情報が、自分が拡散しているヘイトについて考えさせられるきっかけになってくれることを願う」
(フロントロウ編集部)