毎回ゲストとして豪華セレブが出演する米トーク番組『エレンの部屋』で司会を務めるコメディアンのエレン・デジェネレス。
いつもは、矢継ぎ早に飛び出すウィットの効いたトークでゲストたちからさまざまなプライベートな情報を引き出している彼女が、普段の陽気なトーンとは一転、神妙な面持ちで自身の暗い過去について明かす場面があった。
Netflixで5月31日から配信がスタートするトーク番組『デヴィッド・レターマン: 今日のゲストは大スター』の第2シーズンにゲストの1人として出演したエレンは、ホストを務める大御所司会者のデヴィッド・レターマンとのトークのなかで、これまで長い間胸に秘めていた継父からの性的暴行について語った。
同性愛を公表しており、2008年にオーストラリア出身の女優のポーシャ・デ・ロッシと結婚したエレン。今回のインタビューでは、自身がレズビアンであることをカミングアウトするよりもずっと前の10代の頃に母親の再婚相手の男性から性的暴行を受けていたことを明かした。
継父との結婚から間もなく、母親のベティが乳がんの診断を受け、片方の乳房を切除。すると、継父はこのことを口実に、当時まだ15~16歳だった思春期のエレンの胸に幾度となく手を伸ばしてきたという。
エレンはこのときの体験についてこう語った。
「母の留守中に彼は私に胸を触らせなさいと言ってきた。母が乳がんと診断される前、乳房にしこりを感じたと。だから、私の胸にもしこりが無いかチェックする必要があるってね。母を動揺させたくはないけど、私の胸を揉んでみる必要があるって」
「当時私はまだ自分の体についてよく理解できていなかったし、胸なんてみんな同じだと思ってた…。とにかく、継父に胸を触らせるよう説得されて、一度は許した。でもそれ以来、彼は何度も何度も私の胸に触ろうとしてきた」
この継父からの“乳がんチェック“と称したセクハラについて、エレンは、ある時は、ドアをぶち破ってまで自分の部屋に侵入して来ようとした継父から身を守るため、窓を蹴破って外に逃げ出したこともあると話した。
当時は母を守りたい、幸せを壊したくないという気持ちから、継父からの性暴力を打ち明けることができなかったというエレン。しかし、現在では、声を上げることができなかった自分の弱さに怒りを感じていると語った。
今回、エレンが自身の思い出したくない過去を掘り返すことにしたのは、当時の自分と同じ様な問題に苦しめられている若い女性たちに、被害について「我慢する必要なんかない」と伝えたかったからだという。
「母のことを守るんじゃなく、自分自身を守るべきだった。母には何年間もそのことを黙っていた。数年経ってからついに打ち明けたけど、母は私を信じてくれなかった。母は18年間もその男性と連れ添った。最後は彼がころころと話を変える嘘つきだと気づいて別れたけど」、「あの頃母が私のことをもっと気にかけて、信じてくれたら良かったのにって今でも思う。彼女は私を信じようとしなかったことについて謝ったけど、でも…」と母の反応について明かしたエレン。
自身が性的暴行の被害やトラウマに耐えてしまったことへの後悔や母との間にできてしまった確執を踏まえ、世の中の女性たちには、ぜひ1人で我慢せず、勇気を出して声を上げて欲しいと願っていると語った。
「私たち女性は、まだ、自分たちに十分な価値があると感じられていない。声を上げることを恐れているし、『ノー』と言うことにすらビクビクしている。だからこそ、私たちは性暴力について積極的に話していくべきだと思う。たくさんの若い女の子たちが被害に遭っているし、年齢なんて関係ない」
さらに、エレンは性的被害の告発を取り巻く現状についてもコメント。まずは社会全体が、女性たちが声を上げやすい環境を作り、加害者側には厳罰が下されるべきだと語っている。
「女性たちが被害を告発するとすぐに疑いの目を向ける人もいるけど、それには腹が立つ。だって私たちは闇雲に被害をでっちあげるなんてことはしないから。男性たちを批判するつもりはないけど、性的暴行をはたらいた男性たちの多くがお咎めなしで済まされているケースもたくさんある」
前シーズンでは、バラク・オバマ元米大統領や俳優のジョージ・クルーニー、ノーベル平和賞を受賞した人権活動家のマララ・ユスフザイなど、通常ではなかなかお目にかかることができない貴重なゲストが出演し、さまざまなエピソードを披露した『デヴィッド・レターマン:
今日のゲストは大スター』。
シーズン2には、エレンのほかにもラッパーのカニエ・ウェストやF1レーサーのルイス・ハミルトンら個性豊かなゲストが登場する。(フロントロウ編集部)