映画『007』シリーズの第25作目であり、6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグの最終作と言われている『BOND 25(原題)』。
同シリーズはクセの強い悪役も作品の見どころのひとつで、過去の悪役たちは様々な番組でパロディにされてきた。そんな悪役を今作で演じるのは、『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー主演男優賞を受賞したラミ・マレック。
かの有名な『007』シリーズの悪役を演じるにあたってラミは、「(この悪役は)素晴らしいキャラクターだし、見るのが楽しみだよ」と、英Mirrorに語る。しかし悪役を引き受ける前に、今作を担当したフクナガ監督に1つだけ話したことがあるという。
「僕は監督に、『彼に、社会の考えや人種のイメージを押しつけるようなテロ行動はさせられない。そういったことをするのは、僕は楽しめない。もしそれが理由で僕を選んだのであれば、僕をキャストから外してくれて構わない』と言ったんだ」
ラミがこう言ったのには、欧米に住む中東系の人々が直面するある問題が。
欧米では、21世紀初頭にイスラム過激派によるテロがきっかけで、すべてのイスラム教徒=危険という間違ったイメージが作られてしまった。
それによって、テロとはまったく関係ないイスラム教徒や、イスラム教徒でない中東系の人々まで嫌悪し迫害しようとするイスラモフォビア(イスラム教徒に対する嫌悪)が増加する事態に。
エジプト系アメリカ人として幼少期に自分のアイデンティティに悩んだこと、しかし自分がエジプトの血を引いていることに誇りを持っていると、たびたび語ってきたラミ。そんな彼にとって、自身が演じる悪役が中東系の人々の悪いイメージを助長するのは耐えがたいことであり、もし役がそういったものであれば断る決意をしていたよう。
しかし、自身も移民のルーツを持つ日系アメリカ人のフクナガ監督はラミの考えと同じだたそうで、ラミが演じる悪役は「(そういった予想とは)まったく違うタイプのテロリスト」だそう。
『BOND 25』でラミが演じる役は、「高度なテクノロジー技術を操る正体不明の敵」とだけ明かされている。悪役ながらも観客の心を掴むクールなラミの姿に期待が高まる。(フロントロウ編集部)