待望の続編が記録的ヒット
1985年にリリースされた、カナダ人作家マーガレット・アトウッドの小説『侍女の物語』。2017年には、Huluでドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』としてドラマ化され、近未来のアメリカに誕生した宗教国家ギレアド共和国で、あらゆる基本的人権を奪われ、「性奴隷」として生きることを強いられる女性オブフレッドを描き、世界に衝撃を与えた。
宗教や圧政で女性の人権が侵害されることへの批判を含んだ本作は、現代のアメリカで大ヒットし、人気セレブたちも絶賛するほど。プライムタイム・エミー賞では配信サービスのオリジナル作品として初めて作品賞を受賞した。
そんな大ヒットドラマの原作の続編『The Testaments』が9月10日にリリースされた。
続編『The Testaments』では、小説『侍女の物語』のラストから15年が経った世界の物語が、『侍女の物語』にも登場したリディアおばのほか、ギレアド共和国に暮らす女性アグネス、カナダに暮らす女性デイジーの3人の視点から描かれる。
アメリカでは発売からわずか3日で12万部、イギリスでも1週間で10万部以上を売り上げ、記録的なヒットとなっている。Huluでは、早くもドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の続編として、ドラマ化の動きがあると報道されている。
34年経った今、続編を執筆した理由
原作者のアトウッドは、小説『侍女の物語』の続編については執筆できないと、長年にわたり否定的なコメントを残してきた。しかし、ドラマ化されてから、これまで以上に続編を望む声があったという。
アトウッドは、アメリカを含め世界各地が物語の舞台となった宗教国家ギレアドに戻りつつあると感じ、それが続編を執筆する理由でもあると英BBCの取材で語った。さらに、実際にトランプ米大統領は女性に非協力的だという見方もあるアメリカでは、反トランプ派や中絶決定権を重視する活動家の間で、主人公オブフレッドを始めとする、侍女たちがまとっている赤いマントと白いボンネットをシンボルとする動きも見られることに対して、物語と現実が近く感じるという。
発売日前に本が読者の元に...
前述の通り、前作から約30年ぶりの続編リリースということもあり、多くの人が発売日を心待ちにしていた最中、米インターネット通販大手Amazonがまさかのミスを犯していた。
なんと、待望の続編が、9月10日の公式発売日前に誤って一部読者の元に配達されてしまった。その数は、米Amazonを通して事前予約されていた約800部。
待望のリリースを前に「世界最大の書店」を自称するAmazonが起こしてしまったミスに、アトウッドのファンや個人経営の書店は怒りや失望をあらわにし、Amazonに厳罰を科すよう出版社ペンギンランダムハウスに求めている。
一方でそんなトラブルに見舞われながらも、小説『The Testaments』は権威ある英文学賞マン・ブッカー賞の最終候補作にノミネートされ、1作目に引き続き大きな影響力を与えそうな予兆を早くも見せている。
(フロントロウ編集部)