エミー賞71年の歴史で初受賞
80年代のLGBTQ+コミュニティーを舞台にしたライアン・マーフィー制作のドラマ『POSE/ポーズ』のビリー・ポーターが、プライムタイム・エミー賞のドラマ部門で主演男優賞を受賞。2019年で71回目を迎えた同授賞式で、同性愛者をオープンにしている俳優として初めて主演男優賞を手に入れるという史上初を成し遂げた。
名前を呼ばれたビリーは、両腕をブンブン振り回して全身で喜びを表しながらステージへあがると、プレゼンターを務めた俳優のケリー・ワシントンとギュッとハグ。そしてマイクの前で「あぁーーー!」とひと声叫んでから、語り始めた。
「この部門は、ラブです!ラブ!自分が生きているあいだにこんな日が訪れたことに、感動し圧倒されています。ジェームズ・ボールドウィン(※)は言いました。『自分に対して植えつけられたけがれた考えを吐き出して、自分にはこの地球上に存在する権利があるという考えにいたるまで長い時間がかかりました。あと少しで信じるところでした』。自分には権利がある。君にも権利がある。わたしたちみんなに権利があるのです!」
※アメリカの公民権活動家。著書の中には黒人であり同性愛者であることをテーマにしたものがある。
その後ビリーは涙の入り混じった声で、同じ部門にノミネートされた、キット・ハリントン(『ゲーム・オブ・スローンズ』)、ボブ・オデンカーク(『ベター・コール・ソウル』)、マイロ・ヴィンティミリア(『THIS IS US 36歳、これから』)、ジェイソン・ベイトマン(『オザークへようこそ』)、スターリング・K・ブラウン(『THIS ISUS 36歳、これから』)に、「君たちと同じ空気が吸えているだけで光栄です」と言って彼らに感謝。
そして夫をはじめとした家族や『POSE/ポーズ』のキャスト、プロデューサーのライアン・マーフィーなどへの感謝で続けると、客席に向かってこうシャウトした。
「僕たちアーティストは、この地球上に暮らす人たちの考え方や感じ方の分子構造に影響を与えられるんです。だからやめないでください。真実を語るのをやめないでください。みなさんを愛しています!」
拍手喝采で称えられたビリーは最後に、「お願いだから終えてくださいと言われています」とエミー賞主催者側に急かされていることを明かして笑いを誘ってから、ステージを後にした。
エミー賞のビリー・ファッションは?
2019年は、アカデミー賞のタキシードドレスや、メットガラの“太陽の神”ルックなど、イベントでのそのファッションに注目が集まっているビリー。
そんなビリーのエミー賞2019でのファッションポイントは、大きなつばがインパクト大なハット。
こちらはヘッドピースデザイナーのスティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)がビリーのためにカスタムで制作したものとのこと。スーツはマイケル・コース(Michael Kors)のカスタム、ジュエリーはオスカー・ハイマン(Oscar Heyman)を身に着けた。
ビリーはこのハットが相当気に入ったようで、インスタグラムのストーリーに帽子にささげた投稿を何度も連投していた。
『POSE』とは
80年代のLGBTQ+コミュニティーを舞台に、ドラマ『glee』や『アメリカン・ホラー・ストーリー』など、大ヒット作を世に送り出してきたライアン・マーフィーが製作総指揮を務めたドラマ『POSE』。トランスジェンダーの俳優を多数起用して、トランスジェンダーの役者の起用がまだまだ少ないハリウッドに風穴を開ける作品としても注目されている。ドラマはシーズン2の制作が決定済み。
【あらすじ】舞台は、経済が華やかになってゆく80年代後半のニューヨーク。LGBTQ+の若者たちは、母親代わりのマザーの元に集まり、ハウスと呼ばれるグループで共同生活を送っていた。毎週ダンスホールに集まっては、ファッションとパフォーマンスを競い合うコンテストに参加。最もゴージャスでクールなウォークを出来た者が勝利者となる。そんなカルチャーの中で、プライドと純愛、そして夢を追いかける彼女たちはどうなっていくのか。
【キャスト】前述のとおり、トランスジェンダーの俳優を多数起用した本作には個性豊かで多彩なメンバーが集結。主演男優賞を受賞したビリー・ポーターをはじめ、MJ・ロドリゲス、インディア・ムーア、ライアン・ジャマール・スウェインドミニク・ジャクソン、シャーレイ・ウッダード、エヴァン・ピーターズ、ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク、ケイト・マーラ、ヘイリー・サハール、アンジェリカ・ロス、ダイロン・バーンサイド、エンジェル・ビズマーク・クリエルなど、期待の若手俳優や人気俳優が多く登場する。
(フロントロウ編集部)