アメリカの大物司会者マット・ラウアーが、彼に関する性暴力を告発した女性に対して公開書面を発表。その内容に批判が集まっている。(フロントロウ編集部)

大物司会者の疑惑にさらなる証言

 アメリカの朝の情報番組『TODAY』で20年にわたって司会を担当し、1年間に約28億円のギャラをもらい、2016年のアメリカ大統領選ではドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの討論会の司会も務めたほどの大物司会者マット・ラウアーが、2017年に複数の女性から数々の性暴力を告発されてから2年。

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 当時明かされたマットによるセクハラは、同僚女性の誰と寝たいかと話していたこと、同僚女性に大人のオモチャをプレゼントしたこと、オフィスに女性社員を呼んで自身の男性器を見せたこと、などが公表されていた。

 しかし10月15日に全米で発売予定である男性ジャーナリストのローナン・ファローによる書籍『Catch and Kill(原題)』のなかで、当時一般には明かされなかったマットによるレイプ被害も明かされた。マットが司会を務めた『TODAY』を放送するテレビ局NBCでプロデューサーとして働いていたブロック・ネビルスが語った。

 ブロックによると、2014年に開催されたソチオリンピックの際に、彼女とマットが現地での取材を担当。マットに呼ばれ、彼の部屋にブロックが到着すると、マットはブロックを押し倒し、アナルセックスを強要。その後ブロックは数日にわたりお尻からの流血に苦しんだという。さらにマットは、その後数年にわたってブロックに性的関係を強要。大物司会者として権力を持つマットに自身のキャリアを壊される可能性もあり、ブロックは拒否できなかったと述べている。

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マット・ラウアーが公開反論

 NBCがマットを解雇してから約2年。自身に投げかけられた疑惑について沈黙を貫いていたマットが、ついに疑惑について公開書面を発表した。

 その中でマットはブロックとの関係は認めたうえで、関係は合意に基づいたものだったと主張。さらに、自分がブロックとの関係を止めようとした時にはブロックに引き留められたと語り、ブロックは本を売りたいがために嘘の告白をしていると語った。また、2年間沈黙を貫いたのは家族のためであったが、沈黙すべきでなかったとの思いも明かした。

「私を知る人なら誰でも、私は非常にプライベートな人間だと言うことでしょう。これを書きたいとは思ったわけではないが、仕方ないことです。この2年間、私と不倫をした女性たちは私たちにそれぞれにあったはずの責任を放棄し、その代わりに嘘の主張で私を責めることで自分たちを守りました。彼女たちは、彼氏や夫、そして子供に、『私は浮気した』と言うことから逃げたのです。彼女たちは事件の進展に深刻な被害を与えた。私は沈黙することで彼女たちに逃げ場を与えることはもうしない」

画像: マット・ラウアーが公開反論

 このマットの公開書面に対して、NBC関係者から多くの批判があがる事態となっている。

多くの関係者がマットの反論に対してコメント

 当時ブロックの告発を調査し、結果としてマットを解雇したNBCは、その理由の1つとして彼の不適切な性的行為が「単発的なものではないと見られるため」と発表していた。そして今回のマットの反論を受けて、再度従業員にメモを配布。「2014年のマット・ラウアーの行いは恐ろしく、非難に値します」との見解を示した。

 さらに、2000年にマットと性的関係を持ったとして、2017年にマットを告発した1人である『TODAY』の元アシスタントプロデューサー、アディー・コリンズ・ジノーンも米Entertainment Tonightでマットを非難。「私を知る人なら誰でも、私は非常にプライベートな人間だと言うことでしょう」「2017年に彼の行為が告発されて、私も、17年間沈黙することで彼に安全を与えることはもうしない、と決心しました」と、マットが被害者たちを脅し、批判したことに対して、マットの文章を真似た辛辣な皮肉を交えて批判した。

画像1: 多くの関係者がマットの反論に対してコメント

 また、NBCでキャスターとして活躍していたリンダ・ヴェスターは米Daily Beastで、マットとブロックの両者をよく知っているとし、「長い間、私は彼女が苦痛をともなうアナルセックスを強要され、苦しんでいることを知っていました。彼が女好きなのは、メディア業界ではよく知られたことです」と、当時ブロックを救えなかったことへの懺悔の念を口にし、マットの公開書面は性的加害者が行なうDARVO(※)の見本のようだと非難した。

DARVOとは
Deny(否定) Attack(攻撃)Reverse Victim and Offender(被害者と加害者の逆転)の頭文字を取った言葉。性犯罪者が罪を認めず、告発した相手を攻撃し、被害者を加害者のように、加害者を被害者のように見せようとする事例が多いため、この言葉が作られた。

画像2: 多くの関係者がマットの反論に対してコメント

 他にも、『TODAY』や『NBCニュース』に出演するジャーナリスト兼ニュースキャスターであったアン・カリーも職場でのブロックの才能を称え、彼女は信頼できるとしたうえで、「私は彼女が真実を話していると信じています」とツイートした。

画像3: 多くの関係者がマットの反論に対してコメント

 ブロック本人は米Entertainment Tonightに、「私の申し立てに関しては綿密な調査をお願いし、その際にはマットにも反論の機会を設けていました。私は日時や、マットとの連絡の記録など、様々な裏づけ証拠を提示し、NBCもローナンも私が信用できるとしたのですよ。マットの公開書面は、被害者非難の事例研究に相応しいもので、彼に対して勇気を出して告発しようとする他の女性たちへ恐怖を感じさせるものです」とコメントした。

 マットは今年2019年の10月上旬に、10代の娘のTik Tok動画に現れ話題となっていたが、現在その動画は削除されている。(フロントロウ編集部)

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