レイプを連想する「歌詞」が問題視
マルチに活躍するシンガーソングライターのファレル・ウィリアムスがシンガーのロビン・シックとのコラボで2013年にリリースした楽曲「ブラード・ラインズ〜今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪(Blurred Lines)」(以下ブラード・ラインズ)。
人気ラッパーのT.I.も参加し、ロビンのアルバムからのリードシングルとして発売された同曲は、世界各国の音楽チャート1位を席巻し、1480万枚の売り上げを記録。2014年の第56回グラミー賞では「最優秀レコード」「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」にノミネートされた。
しかし、男女のセクシーな駆け引きを描写したエロティックな歌詞が並ぶ同曲は、「I know you want it(わかってるさ、お前は欲しいんだろ)」、「Must wanna get nasty(メチャクチャにされたいんだろ)」といった一節が「レイプを連想させる」、「レイプを助長している」と一部で問題視。イギリスでは20以上におよぶ学生連合が同曲をボイコットした。
「ブラード・ライン」非難から学んだこと
あれから約6年が経ち、ファレルが米GQとのインタビューの中で「ブラード・ラインズ」をめぐる世間からの批判に言及した。
「過去に自分が作った曲の中には、今となっては絶対に書かないし、歌いもしないものもある。恥ずかしいとさえ思うものもある。でもそこに辿りつくまでには、時間と成長が必要だった」と話し始めたファレルは、「ブラード・ラインズ」について、最初はなぜ批判されているのか理解できなかったと告白。
じつは、おもに女性が男性を誘惑するという目線で、この部分の歌詞を作ったというファレルは、批判の声が上がった際、「一体何がダメなんだ?」とすぐにはクレームの意味が分からなかったと明かした。
ファレルが表紙を飾った米GQ
しかし、すぐに、世間では、歌詞と同様のフレーズが男性が女性に性行為を迫る際に使用されていると気づき、ハッとさせられたファレルは、「自分の意図や考えは関係なく、この歌詞を耳にした女性たちが、どう感じるかということのほうが重要だ」と世間の指摘を真摯に受け止めたという。
「曲の中で歌われている歌詞やその歌詞から人々が受ける印象に関して、考えを改めたよ。そんなに多くの批判があったわけではないけど、数は関係ない。それより人々がどう感じるかのほうが重要だ」と語ったファレルは、「僕らが暮らす国(アメリカ)には優越主義文化が根差しているということに気づかされたよ。そして自分の曲のいくつかがそういった嗜好を満たしてしまっていたということにもね…」と、自分の思惑とは違った形で楽曲が世間に影響を与えてしまったことを反省した。
ファレルにとっては“黒歴史”となってしまった「ブラード・ラインズ」は、歌詞の内容が物議を醸したことに加え、シンガーのマービン・ゲイの遺族が同楽曲がマービンの1977年の「黒い夜」を盗用しているとしてロビンとファレルを提訴。裁判の末に盗作が認められ、ロビンとファレルは5億円以上の賠償金等の支払いを命じられた。(フロントロウ編集部)