スーパーヒーロー映画を撮らない監督による「マーベル映画」への批判的な意見は、これまでもたびたび見かけられてきたが、最近両者の争いは活発になっている。そこで、監督や俳優の最近の発言を総まとめ。(フロントロウ編集部)

これが一連の発端!スコセッシ監督の意見

 マーベル映画批判の口火を切ったのは、映画『タクシードライバー』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ディパーテッド』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』といった映画史に残る名作を生み出し、幅広い年代において最前線で活躍してきた映画界の巨匠、マーティン・スコセッシ監督。

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 スコセッシ監督は10月4日に行われた米Empireのインタビュー内で、マーベル映画について言及。その際、MCU作品を見ようとしたけれど、ほとんど見ていないとコメント。さらに、「あれはシネマだとは思いません。正直、マーベル映画はテーマパークのような感じで、感情的・心理的体験を他の人に伝えようとしている人間の映画ではありません」といった。

 スコセッシ監督は10月13日に行われた自身の新作映画『アイリッシュマン』の記者会見で、再びマーベル映画に対する自分の意見を述べ、「映画館をアミューズメントパークのように変えるタイプの映画は、「映画」とは全く別の体験だと思う。賛成の人も、反対の人もいるだろうけど、あれはシネマとは言えない」と再び強調した。

 スコセッシ監督はアカデミー賞やゴールデングローブ賞、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭などの映画賞を総なめにし、DCコミックス原作映画『ジョーカー』のトッド・フィリップス監督をはじめ多くの大物監督が強く影響を受けたと明かしている巨匠なだけに、スコセッシ監督の発言は大きな波紋を呼んでいる。

巨匠コッポラ監督が続けてアンチマーベル発言

 現在80歳を迎えるフランシス・フォード・コッポラ監督は、映画『ゴッドファーザー』や映画『地獄の黙示録』など、誰もが一度は耳にしたことのあるクラシック映画を多数生み出してきた監督。娘は映画『ヴァージン・スーサイズ』や映画『ロスト・イン・トランスレーション』などを製作したソフィア・コッポラで、甥はなんと俳優のニコラス・ケイジという映画一族。

 そんなコッポラ監督が、フランスで開かれた映画の祭典リュミエール・フェスティバルで、スコセッシ監督の発言を支持。

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 「マーティン・スコセッシがマーベル映画はシネマじゃないと言ったけれど、彼は正しい。なぜなら、“シネマ”とは私たちに何かを教え、悟りや知識・インスピレーションなど、何らかのものを習得させるべきだから。「同じような映画」を何度も何度も見続けることで何かを得られるという人間は、いるのだろうか」とコメントしただけでなく、「マーベル映画は映画ではない」と語ったスコセッシ監督に対し「マーベル映画に“卑劣だ”と言わないだけ優しい。自分ならそう言うね」とまで強気の発言をした。

マーベル・ファミリーの反応

ジェームズ・ガン

画像: ジェームズ・ガン

 映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン監督は、自身のTwitterにコメントを投稿。「スコセッシ監督は僕にとって、最も尊敬する映画監督のうち5本の指に入るほどの人物」としたうえで、「人々が作品を観もせずに、彼の『最後の誘惑』を批判した時は憤りを感じたけど、そんな彼が僕の作った作品をそれと同じように批判しているのは悲しい」と憤りをあらわにした。

 そして、ギャング映画を多く撮ってきたコッポラ監督の「同じような映画」という発言に対しては、「昔ギャング映画はすべて同じだと思われていたし、時には“浅ましい”とも言われたものです」としたうえで、「スーパーヒーロー映画は、いわば現代のギャングで、カウボーイで、宇宙の冒険者。かつての西部劇やギャング映画とおんなじです。たとえ天才でも、それを楽しめるかどうかはわかりません。それでいいんです」とSNSでコメントした。

カレン・ギラン

画像: カレン・ギラン

 映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』でネビュラ役を務めるカレン・ギランは米The Hollywood Reporterでガン監督の発言に触れ、「彼は自身の個性やユーモアのセンスを映画に注ぎ込んでいます。それがあるからこそ、作品は非常にシネマチックになるのです。彼はアーティストなのです」と擁護した。

ジョス・ウェドン

画像: ジョス・ウェドン

 映画『アベンジャーズ』のジョス・ウェドン監督は、スコセッシ監督の「感情的・心理的体験を他の人に伝えようとしている人間の映画ではありません」という言葉をツイッターで引用して、「最初にジェームズ・ガンのことを考えました。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』には、彼の温かさや勇気が詰まっています」と、MCU作品を擁護。「(スコセッシ監督を)崇敬しているし彼が言わんとしていることはわかるけれどさ…」と、尊敬する巨匠からの言葉に肩を落とす様子が見て取れた。

ロバート・ダウニー・Jr.

画像: ロバート・ダウニー・Jr.

 『アイアンマン』シリーズのトニー・スターク役、ロバート・ダウニー・Jr.は、「スコセッシ監督の意見には感謝するよ。何事においても、いろんな見方をする人の意見を聞くことは重要だと思う。そうすることで、議論を集めて前進することができるからね」と冷静な意見を述べたうえで、マーベル映画は「シネマではない」とする意見は「意味をなしてない」とバッサリ。

 続けて、「世間では、スーパーヒーロー映画というジャンルが映画というものの芸術性をダメにしたという意見がたくさんあったよね。もしそれが問題だって言うなら、僕はその“問題”の一部になれたことを嬉しく思うよ。だって、(スーパーヒーロー映画というジャンルは)まるで野獣のように大きな足音を立てながら、ほかの競争相手たちをどんどん踏み潰していったんだよ。それって、驚異的なことじゃないか」と、MCU映画の成功を誇らしげに語った。

サミュエル・L・ジャクソン

画像: サミュエル・L・ジャクソン

 『アベンジャーズ』シリーズのニック・フューリー役、サミュエル・L・ジャクソンは米Varietyの取材で、「映画は映画。誰もがマーティンの映画を好きだというわけでもないし、それぞれに意見があっていいと思う。それで誰かが映画作りをやめるきっかけにもならないし」と、一歩身を引きつつもはっきりとした意見を述べた。

ナタリー・ポートマン

画像: ナタリー・ポートマン

 『マイティ・ソー』シリーズのジェーン・フォスター役、ナタリー・ポートマンは、「どんな映画にだって存在する余地はあると思う。芸術をつくるのにたった1つの方法しかない、なんてことは無い」とコメント。「マーベル映画が人気なのは、本当に面白くて、人々がそういった娯楽を強く求めてるからだと思う。仕事で疲れて帰ってきた後や、日常生活での困難に立ち向かっているとき、みんなが求めるのは、そういうものなんだと思う」と、MCU映画の魅力を述べた。

ポール・ラッド

画像: ポール・ラッド

 『アントマン』シリーズのスコット・ラング役、ポール・ラッドは、出演したラジオ番組でマーベル映画はシネマだと思うかと聞かれ、「そうだと思う」と答えた。「マーベル映画は、VFXの効果だけではなく、ちゃんと人間同士の関係性を描いている。」と述べたうえで、「キャラクター感情的・心理的経験を伝えようとしているし、『アントマン』でいえば娘との関係性を描いている。」とコメント。

ジョン・ファヴロー監督

画像: ジョン・ファヴロー監督

 『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴロー監督は、米CNBCに「スコセッシやコッポラは自分にとってのヒーローで、彼らには意見をするだけの権限がある。彼らがこの道を開拓してくれなかったら、僕は監督にはなっていなかった」としたうえで、「(1996年の自分の映画)『スウィンガーズ』の時代から彼らがインスピレーションの源だった。彼らだったら何を言ってもいい」と巨匠たちに敬意を示した。

セバスチャン・スタン

画像: セバスチャン・スタン

 『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー・バーンズ役、セバスチャン・スタンは、米ヒューストンで開催されたイベントFandemic Tourでコッポラ監督の意見に言及。コッポラ監督について、「現代で最高の映画監督であり、永遠の存在だし、自分にとってのヒーローの一人」と称えつつも、「作品を観た人たちは、『ありがとう』、『この映画に救われた』、『この映画のおかげで気分が晴れた。孤独を感じなくなった』とよくお礼の言葉をかけてくれる。それって、マーベル映画が人々の助けになってるってことなんじゃないの?」とコメント。

 そして、「すべての映画が何かしらの形で貢献している。そういうことなんだと思う。人を助けられるなら、僕は支持するよ。それが小さなスクリーンで見られる作品だろうが、iPhoneで見られようが、背後に天才や会社がいようが関係ない。誰かを助けられることなら僕は支持する」と持論を展開した。

ベネディクト・カンバーバッチ

画像: ベネディクト・カンバーバッチ

 『ドクター・ストレンジ』シリーズのドクター・ストレンジ役、ベネディクト・カンバーバッチは、米Sirius XMのラジオ番組で一連の議論について言及。「マーベル映画のフランチャイズが、王のように全ての映画を乗っ取るというとでも思っているんでしょうかね」とコメントし、さらに「映画製作者はあらゆるレベルで支援されるべき」だといった。

ウォルト・ディズニー・カンパニーCEO、ボブ・アイガー

画像: ウォルト・ディズニー・カンパニーCEO、ボブ・アイガー

 MCU映画を配給しているウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・アイガーは、米Wall Street Journal主催のカンファレンス・イベントに参加した際、コッポラ監督やスコセッシ監督からの意見に対し「困惑している」と述べた。

 「私自身も彼らの映画が好きですし、私たちはみんな彼らの作品を観てきたので、とても尊敬しています」と前置きしつつ、コッポラ監督からの「卑劣だ」という意見に対し、「そういうことは大量殺人を犯したような人に対する言葉では」と言った。そして、マーベル映画を作っている人々は、スコセッシ監督やコッポラ監督と同じように映画を楽しんで作っているということをアピールした。

その他の、賛否の意見

ケン・ローチ監督

画像: ケン・ローチ監督

 映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』などを制作したケン・ローチ監督は、カンヌ国際映画祭で2度パルム・ドールを受賞、カンヌ国際映画祭では金熊名誉賞を受賞したこともある人物。そんなケン監督は、米Sky Newsのインタビューで「マーベル映画はハンバーガーのような商品」とコメント。「大きな利益を上げるためのものでしかなく、それは皮肉な活動ともいえる。映画芸術とは何の関係もないですよ」と皮肉たっぷりに語った。

フェルナンド・メイレレス監督

画像: フェルナンド・メイレレス監督

 映画『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス監督は、ムンバイの映画祭で、「マーベル映画は見ないのでよくわかりません…」と述べつつも、8年前に『スパイダーマン』を見ようとしたけれど、それ以上は興味がわかなかったという。一方で「マーベル映画なのかはわかりませんが『デッドプール』はとてもよかったです。素晴らしいアクションシーンがありました」と称賛したのもつかの間、「その後に飛行機で『デッドプール2』を見ようとしましたが、30分ほど見てやめました」と明かした。

ピーター・ラムジー監督

画像: ピーター・ラムジー監督

 アニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』のピーター・ラムジー監督は、「マーティン・スコセッシは神。マーベル映画は面白い。解散!」とだけツイート。ピーター監督によると、コッポラ監督は彼の『スパイダーバース』を鑑賞し、大絶賛したそう。

 現在活発に意見が交わされている「マーベル映画はシネマなのか」論争。良くも悪くも、映画業界を盛り上げるきっかけにはなっている。(フロントロウ編集部)

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