時短メイクの「理由」
世界興行収入が900億円を超えるだいヒットを記録し、すでに、R指定映画としては史上最高額を稼ぎ出した作品となった映画『ジョーカー』。
ホアキン・フェニックスの怪演が絶賛されるなか、ときに人々を芯から震え上がらせ、ときに哀愁を漂わせるジョーカーを創り上げる重要な要素となったのが、独特で不気味なメイク。
一般的に映画用のメイクというと、撮影のたびに、プロのメイクアップアーティストが数人がかりで何時間もかけて仕上げることが多いけれど、同作のメイクを担当したニッキー・レダーマンによると、本作での“ジョーカーメイク”にかかった時間は平均15~20分。
ニッキーが短い時間でささっとメイクを仕上るようにした背景には、素人であるアーサーが施したメイクであることがわかるよう、あまり作り込んだ印象にしないようにという思惑もあったものの、じつは、もう1つやむを得ない理由が。
それは、ホアキンが、メイク用の椅子に座って15分以上じっとしていることができなかったから。
ニッキーは、英Dazed Beautyとのインタビューの中で「ジョーカーのメイクは毎回平均15~20分以内で仕上げるようにしていました。ホアキンが長い時間じっとしていることができなかったのと、あまり完璧な仕上がりにはしたくなかったからです」と時短メイクを心掛けた理由について明かした。
短時間で施されたとはいえ、手抜きだったわけではもちろんなく、よりリアルで不気味な質感や色合いを演出するために、ニッキーはさまざまなコスメをミックスして、ジョーカーメイクの基盤に辿り着いたのだそう。
ジョーカーのメイクを手がけるうえで苦労した点について、ニッキーは、「撮影がかなりのスピードで進行していたので、それを妨げないよう、さっとメイク直しができるようにしたことと、すべてフリーハンドで施していたので、一度したメイクを正確に再現できるようにするのが大変でした。きちんと記録をつけて、シーンごとの繋がりを意識しました」と語っている。
ちなみに、ジョーカーメイクに使用されたコスメはすべてM・A・C(マック)のものだそうで、目元のカラーには、ブルーとグリーンのアイシャドウをミックスし、口元のメイクにはレッドにブラックを少し混ぜて不気味さを演出したのだそう。(フロントロウ編集部)