「映画は誰の所有物でもない」
映画『タクシードライバー』や『ギャング・オブ・ニューヨーク』など数々の名作を生み出してきたマーティン・スコセッシ監督は、2019年10月の初めごろにマーベル関連作品に対して「あれはシネマだとは思いません」という発言をし、映画界に激震をもたらした。
それに対し、マーベルの関係者は次々にコメント。シリーズを作り上げた敏腕プロデューサーのケヴィン・ファイギをはじめ、ジェームズ・ガン監督や、ロバート・ダウニー・Jr.、サミュエル・L・ジャクソンなど、名だたるMCUメンバーがそれぞれの意見を示してマーベル映画を擁護した。
そんな「マーベル映画はシネマか論争」について、映画『キャプテン・アメリカ』シリーズや『アベンジャーズ/エンドゲーム』などを監督したアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟はしばらく沈黙を貫いてきたものの、ついに2019年11月17日に行なわれた米The Hollywood Reporterのインタビューでその口を開いた。
マーティンが米New York Timesで「マーベル映画はテーマパークのような感じで、感情的・心理的体験を他の人に伝えようとしている人の映画ではない」と語ったことを受け、ルッソ兄弟は「『アベンジャーズ/エンドゲーム』の興行収入の結果は、“経済的な成功”よりも、“感情的な成功”の象徴として見ている」と反論。
さらにジョーは、「なぜなら『エンドゲーム』では世界中の視聴者の間に、いまだかつてないインパクトと映画体験を共有できたし、そこには様々な感情もあった」と付け加えた。
そして、「MCU作品を見ようとしたけれど、ほとんど見ていない」とコメントしているマーティンに対して兄弟は、議論しようとしている映画を見ていない人とは対話することはできないと一蹴。
アンソニーは「マーベル映画はシネマか」という問題について、「マーベル映画がシネマじゃないかなんて、誰にも分らないよ。なぜなら、“シネマ”は誰の所有物でもないから。僕らのものでもないし、マーティンのものでもないのでは」と、映画の概念は誰かが決めることではないとコメント。
それに対しジョーは冗談めかして、「でも、結局のところ我々は(映画とシネマの)何を知っているんだろう?僕たちはオハイオ州クリーブランド出身の2人の男なんだけど、“シネマ”はニューヨークの言葉だよね。クリーブランドではそれを“ムービー”と呼んでいるんだけど」と茶化した。
そして「私たちは“映画”を、人々を感情的な経験で結びつけるものだと定義しているよ」と述べ、多くの観客を魅了したマーベル映画を「テーマパーク」だと言ったマーティンの発言をたしなめた。(フロントロウ編集部)