性行為中に叩く、首を絞める…
同意のない性行為はレイプである。多くの女性が性被害に遭うなかで、このような考えが広く訴えられるようになっている。
しかしイギリスで、同意のある性行為中に男性によって、暴力的な行為をセックスの一環としてされたという女性が、約40%にまで上ることが明らかになった。
性行為には同意していても、暴力的な行為をされると想像する女性は少ない。
しかし、18歳から39歳のイギリスに住む女性で、年齢や地域に偏りのないように2000人以上を対象にしたSavanta ComResの調査では、69%の女性が、はたかれる、首を絞められる、猿ぐつわをされる、つばを吐かれる、といった行為をされたことがあると回答。そのうち38%が望まないのにそういう行為をされことがあると、31%がそういう行為をされたが望んでいたと回答。そして、回答したくない、または経験したことがないという回答は31%だった。
また、そのような経験をしたことのある女性で、暴力的な行為を受け入れなくてはいけないというプレッシャーや強制を感じたという人は、42%に上った。
英The Centre for Women's Justiceによると、このような現状は、「過激なポルノが普通とされ、広く手に入ることが原因と見られている」という。
英BBCのインタビューに答えたアナという女性も、過去に男性から、性行為中に髪を引っ張られたり、はたかれたりした経験があるという。当時を振り返り、「ショッキングでした。死ぬほど不快だったし、怖かった。だって、もし誰かが道端であなたのことをはたいたり、首を絞めたりしたら、それは暴行ですよ」と憤りをあらわにした。
また、英Women's Aidのアディナ・クレアは、「セックスに同意するということは、誰かをはたいたり、首を絞めたりする行為の深刻さを軽減しません」と指摘する。
行き過ぎた性行為によって命を落とすことも
今年2019年11月には、性行為中に首を絞められた19歳の少女が命を落とす事件がアメリカで発生。これまでにも、過激な性行為によって命を落とした人は少なくない。
性行為と人間関係を専門とする心理療法士のスティーヴン・ポープは、性行為中の暴力について「それは静かなる大流行ですよ」と英BBC Radio 5 Liveで指摘。
「人々はそれが普通だと思っているから、やるのです」と、暴力が性行為の一環と見なされているとしたうえで、「首絞めは、いつだってハイリスクです。なのに人々がそれについて考えるのは、本当に最後の最後なんです」と警鐘を鳴らす。
また、“セックスゲームが誤った方法に転んだ”として女性が命を落とした際に、性行為そのものへの同意はあったことを自分の擁護に使うケースが増えていることも問題となっている。この現状を危惧したフィオナ・マッケンジーという女性が、「We Can't Consent to This(これには同意できない)」というキャンペーンを立ち上げている。
AVによる現実への影響は?
過激なアダルト動画が、実際の性行為に与える影響に関しては、これまでに様々な調査が行なわれている。
1997年から98年にかけて警察庁科学警察研究所が、強姦(ごうかん)や強制わいせつの容疑で逮捕された加害者に行なった調査では、33.5%が「AVを見て自分も同じことをしてみたかった」と回答。さらに少年にかぎった場合は、49%にまでなるとの結果が出ている。
しかし、すべてのアダルト動画が問題なのではなく、女性への暴力を含むアダルト動画を見た男性が、女性への攻撃性を顕著に高めたことが、エドワード・ドナーシュタインの実験によって明らかになっている。(フロントロウ編集部)