『AGT』ガブリエルが1シーズンで解雇
アメリカのオーディション番組として世界中で人気を誇る『アメリカズ・ゴット・タレント』で、前シーズン14より審査員として参加していた女優のガブリエル・ユニオンが、たった1シーズンをもって番組を去ることが発表された。
『アメリカズ・ゴット・タレント』の放送局である米大手NBCを知る多くの関係者の間では、ガブリエルは差別に反対していたことで番組をクビにされたと推測されており、多くのタレントや業界関係者がガブリエルのために声を上げる事態となっている。
さらにこのクビ騒動に関連して、『アメリカズ・ゴット・タレント』のブラックすぎる職場環境が浮き彫りになり、NBCが炎上している。
収録現場で起きていたこととは
番組スタッフによると、ガブリエルは収録現場にはびこる“有害な文化”に声を上げ続けていたという。
米Varietyによると、今年2019年4月にゲスト審査員として出演したコメディアンのジェイ・レノが、収録中にアジアの文化をネタにしたジョークを言ったという。これは差別にあたると問題視したガブリエルは制作陣に対して、人事部に報告したほうが良いと提案したそう。しかし結果的に、ジェイの行動が報告されることはなく、ジョークは放送からはカットされた。
また、黒人であるガブリエルにとって、撮影現場での黒人差別は我慢ならないものだったと言われている。ある回のオーディションに参加した白人男性は、様々なセレブのモノマネ芸を披露。そのなかで歌姫ビヨンセのモノマネを行なった際に、手を黒く塗って(※)いたという。
※アメリカでは、白人が奴隷である黒人のモノマネをする際に黒塗りの化粧をしていた人種差別の歴史があり、現在ではそういった行為はタブーとなっている。とくに顔を黒く塗ることは、ブラックフェイスと言われる。
他の回では、ガブリエルはある10歳の黒人少年を応援していたが、「アメリカが応援できる出場者」でなければ選ばれないと告げられたと、米Vultureが伝えている。
そしてプロデューサー側からの、女性出演者の外見に対する過剰なコメントもあったという。ガブリエルは、髪型が「黒人っぽすぎる」と言われていたり、ガブリエルとともに審査員を務めていたジュリアン・ハフも含めて、メイクや衣装などへの批判が行なわれていたりしたと見られている。
さらに、番組の名物審査員であるサイモン・コーウェルは、室内でタバコを吸う習慣があり、タバコアレルギーであるガブリエルは困惑。室内の職場でタバコを吸うことはカリフォルニア州の法律で禁じられていることもあり、サイモンに室内でタバコを吸うのを止めるよう求めたという。
劣悪な職場環境に対して、ガブリエルのモラルにのっとった主張が反映されていくかと思いきや、NBCはガブリエルとの契約を更新しないことを発表した。
とくに今回は、ガブリエルが黒人であること、そして女性であることで、ガブリエル本人に対しても差別があり、このような結果になったと問題視されている。
NBCの対応を批判する声が続出
女性差別に声を上げる「Time’s up」は、そのホームページでガブリエルをサポートする署名運動を開始し、こう声明を発表した。
「NBCは、権力を持つ男性を守るために従業員を犠牲にするのはやめ、すべての人のために、有害な労働環境への取り組みを行なうべきです」
また、撮影現場ではサイモンがガブリエルについて「彼女は難しい」と発言していたという証言も。
それを受けて、過去に『アメリカズ・ゴット・タレント』の審査員を務めていた大御所ラジオパーソナリティのハワード・スターンは、自身のラジオ番組『SiriusXM(原題)』の中で、サイモンを名指しで批判。
「男はどれだけ汚くても、どれだけ年寄りでも、どれだけ太っていても、どれだけ才能がなくても、そこに居座り続けられるって、彼が作り出している」
続けて、こんな痛烈なコメントを残した。
「これは、“男だけの社交クラブ”の究極の例じゃないか」
NBCで多くの番組に出演するデブラ・メッシングは、「自分のキャリアのホームである放送局が、このような最低な対応を取った」とツイッター上で一刀両断。さらに、サイモンの言葉を引用して、女性の声が潰される現状を批判した。
「もちろん女性は“難しく”なる。彼女たちの主張が、敬意やプロフェッショナルな労働環境に関してであり、なおかつ無視された時にはね」
一連の件に関してNBCは、「『アメリカズ・ゴット・タレント』は、包括的かつ多様的である長い歴史を持っています。審査員や司会者のキャスティングは、定期的にリフレッシュするものです」とコメントしている。
しかしNBCの弁明に納得しているセレブは少なく、ガブリエルの友人であるエヴァ・ロンゴリアや、シンガーのアリアナ・グランデ、エレン・ポンピオやメラニー・リンスキーなど、多くのセレブがガブリエルを支持するコメントを出している。(フロントロウ編集部)