覆面アーティストのバンクシー
イギリスを始め世界各国で、社会への皮肉を込めたストリートアートを発表し、熱狂的ファンを持つ正体不明アーティストのバンクシー(Banksy)。
ストリートアートの他にも、2015年には“悪夢のテーマパーク”というテーマのディズマランドを期間限定でオープンしたり、2018年には約1億5,000万円で落札された自身の作品をシュレッダーで切り刻んだり、2019年にはオンラインショップをオープンしたりと、その活動の幅は留まるところを知らない。
そんなバンクシーが、正統派バンクシー作品ともいえるストリートアートの新作を発表した。
バンクシーのインスタグラムに公開された、イギリス第2の都市バーミンガムで撮影された映像。そこには、ライアンと呼ばれるホームレスの男性の姿が。ライアンが座るベンチの先の壁には、白い2匹のトナカイが描かれ、ライアンはさもサンタクロースのよう。
その後ろでは、「クリスマスは家に帰るわ…」と歌うミュージックが流れる。
クリスマスに家に帰りたくても帰れない、ホームレスの人々が直面する苦痛をアートに落とし込み、関心を呼びかけたバンクシー。しかし彼は、この映像を撮影していた20分間で、道ゆく人々が、1杯の温かい飲み物、2本のチョコレートバー、そして1つのライターを手渡してくれたとも明かした。
ホームレス人口は、世界各国の都市部で急激に増加している。また、日本ではネットカフェなどに滞在し続ける人々をネットカフェ難民と呼び、ホームレスの人々と同様に問題になっている。
ホームレスになった場合、身分証、連絡先や住所などがないことから仕事が得られず、収入が得られないため家を見つけることが出来ない、という負のループに陥ってしまうことも、ホームレス問題の大きな要因として認識されている。
英Crisisの調査では、ホームレスを経験した人のうち10人に8人が暴力や反社会的行動などの被害になったことがあると明らかになった。その被害内容には、蹴られたり物を投げられたりといった暴行、また言葉による暴力、そして脅しなどが挙げられる。
クリスマスや年末には家に帰る人も多いなか、帰りたい家に戻れず寒空の下で過ごすホームレスの人々。バンクシーの新作は、見る人々の心に多くを訴えかけている。(フロントロウ編集部)