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『テッド・バンディ』は長年の“問題作”
実在の殺人鬼テッド・バンディの犯行を、唯一の恋人リズの視点で描いた映画『テッド・バンディ』でメガホンを取ったジョー・バリンジャー監督が、物議を醸す同作が映画化されるまでの制作秘話をフロントロウ編集部に話してくれた。
30人以上の若い女性を卑劣な犯行で殺害したテッド・バンディ。シリアルキラー(=連続殺人鬼)の語源にもなったと言われる、元死刑囚のテッドをザック・エフロンが演じて話題になった同作は、長年“ハリウッドのブラックリスト”入りしていた作品。
ハリウッドの「ブラックリスト(The Black List)」とは、エグゼクティブプロデューサーら映画関係者が太鼓判を押すも映画化するには論争を招く危険がある作品のリストのこと。ここからアカデミー賞受賞作品が輩出されることも多く、公式サイト(blcklst.com)では、映画化を望まれるワケあり作品がズラリと並んでいる。
最近では、ラッパーの故マック・ミラーの自伝映画がこのリストに追加され、話題になった。
そんなハリウッドのブラックリスト入りしていた同作は、結果的にバリンジャー監督の手にとまり、映画化することが出来た。そこまでの道のりは偶然の繰り返しだったという。
じつはバリンジャー監督は、同作のほかに全米公開と同じ時期にNetflixで配信された『殺人鬼との対話:テッド・バンディの場合』というドキュメンタリー番組の監督も務めており、映画とドキュメンタリーという形でテッド・バンディを映像化している。
そんなバリンジャー監督だが、当初は映画とドキュメンタリーの両方を制作するつもりはさらさらなかったといい、この映画との出会いはドキュメンタリーがあったからだと語る。
「(すべてのはじまりは、テッド・バンディの)録音テープを手に入れる機会があって、これでドキュメンタリーをやらないかって言われたから。テッド・バンディの作品はすでに世の中にたくさんあったから、ハードルも高いしやるかどうか迷ったし、録音テープだけで観客を満足させられるのか不安だった。でも録音テープを聞いた時に、鳥肌が立ったんだ。テッドが口にしたことや、彼が説明する事柄に、殺人鬼の胸の内を知ることができた。それでドキュメンタリーを作ることに決めた。
それから、エージェントと偶然LAにいた時に、制作に取り掛かってまだ3ヶ月しか経ってなかったドキュメンタリーの話をしていたら、ハリウッドのブラックリストに(テッドに関する)脚本があるから読んでみたら?と提案された」
あの女優が監督するはずだった
そこで初めて手にした映画『テッド・バンディ』の脚本は、多くの関係者の間で回されていたことを物語るほど、コーヒーのこぼした後などで紙が汚れていたという。この脚本を見た関係者のなかには、俳優兼監督として活躍するジョディ・フォスターの名前もあったという。
「物議を醸す内容が多くてみんなどうやって作っていいのかわからなかった。一時期ジョディ・フォスターがこの作品を監督する予定だったんだけど、結局、実現しなかった」
業界人が頭を抱えた作品を映像化することになったバリンジャー監督は、当初の脚本の問題点をこう指摘する。
「脚本を読んで引き込まれたけど、この脚本には視聴者がラストになるまでテッド・バンディの存在が知らされないという問題点があった。この話が本ならそれでもいいんだけど、今の時代は、すぐにネタバレしてしまうから、脚本の構成を変えて、ラストシーンから始まる展開にしようと決めた。テッド・バンディを知らない若い世代の人が映画を見たら、リズが経験した騙しや脅かしを経験できるようにしたかった」
こうした内容で視聴者を引き込んだバリンジャー監督。この映画の制作にあたり、バリンジャー監督はもう1つ条件として、殺人鬼だとしても彼を信頼したくなる、テッドの恋人リズの経験を、身をもって感じさせてくれる役者を要求。それがザック・エフロンだった。
映画『テッド・バンディ』の主人公役としてザックの配役がなぜ重要だったのか、その答えはコチラのインタビュー記事で紹介している。(フロントロウ編集部)