キャリー・マリガンが、男性優位とされるアカデミー賞について、その投票システムを変えるべきだと意見した。(フロントロウ編集部)

アカデミー賞、ノミネーションはほぼ男性

 映画界で名誉ある賞とされる米アカデミー賞だけれど、2015年までの25年間で授与された演技賞のうち88.8%は白人俳優が受賞していたり、監督賞は91年の歴史のなかで監督賞を受賞した女性はたった1名、ノミネートもわずか1.41%だったりと、「白人」「男性」によって独占されてきたことが問題となっている。

画像: 2015年のアカデミー賞候補者たち。

2015年のアカデミー賞候補者たち。

 今年2020年第92回アカデミー賞の監督賞では、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグ監督や『フェアウェル』のルル・ワン監督、『ハスラーズ』のローリーン・スカファリア監督や『ブックスマート』のオリヴィア・ワイルド監督など、女性監督のノミネートが期待されたけれど、結果は、ノミネートされたすべての監督が男性となった。

 そんななか、『16歳の肖像』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたことのあるキャリー・マリガンが、アカデミー賞の「投票システム」に異議を唱えた。

投票者は女性の作品を「観ていない」?

 サンダンス映画祭に参加したキャリーは、ローリーン・スカファリア監督の『ハスラーズ』が評価されていないことについて、「つまり、見ていないということ。見ているわけがない。あのパフォーマンスを見たら、無視することや、評価されるべきじゃないと思うことなんてありえない」と持論を展開。そして、こう述べた。

「すべての作品を観たと証明できないかぎり、投票できるべきじゃないと思います。テストがあるべき。取り残された映画は、疑いの余地なく素晴らしいものですよ」

画像: 投票者は女性の作品を「観ていない」?

 実際に、高い評価を受けている『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のアカデミー賞向けの初の上映会では、観客のほとんどが女性に。プロデューサーのエイミーは、「悪意のある拒絶ではないと思っています」としたうえで、米Vanity Fairにこう述べている。

「これは、完全に無意識の偏りですよ。(投票権を持つ)男性が群衆になって上映に来たかどうかはわからないし、彼らがいつDVDを受け取ったのかも、見たのかもわかりません」

男性投票者が大多数を占めるアカデミー賞

 「(投票の)システムが機能していないんです」というキャリーの指摘は、これまでも他の映画評論家がたびたび指摘している。

画像: 男性投票者が大多数を占めるアカデミー賞

 アカデミー賞の投票権を持つアカデミー会員は約9,000人前後と言われており、それぞれの職業や功績に応じて、俳優部や監督部、編集部など17の部に分けられる。監督賞は、監督部の会員によって投票されるが、会員はそれぞれが映画界で活躍するプロであり、すでに映画界で活動していない場合は投票権を持たない名誉会員となるため、投票権を持つ会員がすべての映画を見ている時間があるかどうかには疑問が持たれる。

 そうした状況では、自分の興味のある作品だけをピックアップして鑑賞し、そこから投票することも往々にしてあると考えられる。

 そんななか、アカデミー賞会員の約70%を男性が占めており、その84%が白人。選考側が「白人」の「男性」であるがゆえに、「白人男性が興味を持ちやすい」作品が優位になりがちになっている。

映画界では女性が起用されない

 また、女性監督が監督賞にノミネートされない状況の背景として、女性監督が起用されないことも問題視されている。

 『アイリッシュマン』のマーティン・スコセッシ監督や『シックス・センス』のM・ナイト・シャラマン監督、『ミッドナイト・イン・パリ』のウディ・アレン監督など、ハリウッドのヒットメーカーを多数輩出したニューヨーク大学芸術学部の映画/テレビ制作学科の生徒は、約半数が女性。

 しかし、興行収入の年間トップ250に入る映画で、女性監督による作品はわずか13%であるという不均衡が、テレビ・映画における女性研究センターの調査で明らかになっている。

 2015年にアカデミー賞を運営する映画芸術科学アカデミーは、2020年までに女性とマイノリティの会員数を倍にすることを目標としていたが、2019年時点で約70%が男性となっている。(フロントロウ編集部)

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