非現実的な出来事の連続
作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーの名作ミュージカルを最先端のVFX技術を駆使して実写化した映画『キャッツ』。
同作には、大物俳優のジュディ・デンチやイアン・マッケラン、人気シンガーのテイラー・スウィフトやジェニファー・ハドソンやジェイソン・デルーロ、そしてコミカルな演技に定評がある俳優のジェームズ・コーデンやレベル・ウィルソンといった多彩なキャストたちが集結し、個性豊かな猫たちになりきって味のある演技を見せたほか、バレエ、ヒップホップ、タップダンスほか、さまざまなスタイルのダンスを得意とする名ダンサーたちが、しのぎを削る圧巻のパフォーマンスを披露した。
なかでも、主人公である捨て猫のヴィクトリアを演じたバレエダンサーのフランチェスカ・ヘイワードは、その類稀なるダンステクニックやバレエで培った表現力はもちろん、可憐な美しさの中にもスター性を感じさせる存在感で、観客たちや批評家を魅了した。
世界3大バレエ団と称される英国ロイヤル・バレエ団で階級の頂点に位置するダンサーを意味する、“プリンシパル”として活躍するバレリーナのフランチェスカ。
これまでに何度も大舞台を踏んできたフランチェスカだが、『キャッツ』への出演は、まるで夢の中にでもいるような、現実離れした体験の連続だったと米Bustleに明かしている。
幼い頃からミュージック版『キャッツ』の大ファンで、舞台のビデオを何度も何度も観ながら自宅のリビングルームで踊っていたというフランチェスカ。
そんな彼女が、いつかは出演してみたいと思っていた同作の映画版の主役の座を勝ち取ったという、それだけでも、もう1本の映画が作れそうなサクセスストーリーはさておき、「撮影中は頬っぺたをつねりたくなるような瞬間が本当にたくさんありました」と語ったフランチェスカが、最も感動した体験の1つとして挙げたのが、フランチェスカ演じるヴィクトリアが歌う劇中歌「ビューティフル・ゴースツ(BeautifulGhosts)」をアンドリューとテイラーが共同で書き下ろし、それを初めて耳にしたときのエピソードだった。
その言葉を口にするだけでも笑ってしまう
ミュージカル版では彼女が演じるヴィクトリアが歌うソロ曲はないのだが、監督を務めたトム・フーパーとアンドリューの協議により、物語の流れとして、彼女が歌う劇中歌は必須だということに。
そこで、2人がテイラーに依頼し、「ビューティフル・ゴースツ」が誕生したのだが、フランチェスカはこの一連の出来事について、「曲ができるっていうのは聞いていたけど、『テイラーがアンドリューと話して、曲を書いてくれたよ』と伝えられたときは、本当にびっくりした」と振り返っている。
テイラーが歌う「ビューティフル・ゴースツ」。
レコーディングに先がけて、テイラーと対面したフランチェスカだったが、そこでまたさらに、“頬をつねりたくなるような”夢のような出来事が。なんと、テイラーは、フランチェスカにデモテープを聞かせるのではなく、自らその場で「ビューティフル・ゴースツ」を歌って聞かせてくれたのだという。
「テイラーが実際に私のために歌ってくれたの。私が初めてあの曲を聞いたのはテイラーの生歌だった」と、今でも信じられない様子でそう語ったフランチェスカは、さらに、「テイラーは、歌い終わった後、『これでOKかしら?』って私に聞いたのよ」と、テイラーの謙虚な姿勢についても明かした。
劇中歌を作るためにテイラーがしっかりと自分が演じるヴィクトリアの役を下調べし、ヴィクトリアの心情になりきっていたことにも、さすがのプロ根性を感じたと米MTV Newsに語ったフランチェスカは、まさか、バレエ一筋でやってきた自分が映画に出て歌声を披露する、しかもあのテイラーが作った歌をうたうとは、夢にも思っていなかったといい、「私が歌をうたうって、それだけでも驚きだけど、私がテイラー・スウィフトが作った歌をうたうって…この言葉を口に出したり、文章として目にするだけでも信じられなくて、毎回、思わず笑っちゃう」と、夢心地だった映画『キャッツ』との時間を噛みしめていた。(フロントロウ編集部)