故ヒース・レジャーが、生前にアカデミー賞のオープニング司会を断っていた。ヒースの心にあった『信念』とは?(フロントロウ編集部)

信念を貫いたヒース・レジャー

 20歳で出演した映画『恋のからさわぎ』でアイドル的人気を博したものの、演技派俳優としてのキャリアを求めて活動し、その後『チョコレート』や『ブロークバック・マウンテン』の演技で高い評価を受けた故ヒース・レジャー。彼が逝去した2008年公開の映画『ダークナイト』でのジョーカーの演技は、彼に第81回アカデミー賞の助演男優賞をもたらした。故人が同賞を受賞したのは史上2回目だった。そんなヒースは生前、ある信念を心に持って行動していたという。

画像: 信念を貫いたヒース・レジャー

ジェイク・グレンホールが明かすヒース・レジャー

 米Another Manのインタビューでクリス・ヒースが、『ブロークバック・マウンテン』でヒースの恋人を演じたジェイク・ギレンホールにインタビュー。同性愛者である2人の男性の20年におよぶ恋愛を描いた今作は高い評価を受け、この年のアカデミー賞に最多8部門にノミネートされた。ヒースは主演男優賞、ジェイクは助演男優賞にノミネートされたけれど、受賞とはならなかった。

 クリスはインタビューの前に、当時のテレビ番組をいくつか見たそう。すると、あることに衝撃を受けたという。それは、今作が同性愛者の愛を真摯に描いた作品にもかかわらず、作品の同性愛をネタにしたジョークが数多くの番組で発せられていたこと。アメリカで今作が公開された2005年当時は、今よりもさらに同性愛に対する理解が深まっておらず、なんとジェイクによると、こんな計画さえあったという。

「関係者が、あの年のアカデミー賞のオープニングをやりたがっていたのを覚えてるんだ。同性愛をジョークのネタにしたようなね」

 『ブロークバック・マウンテン』で同性愛者カップルを演じたヒースとジェイクが、世界的映画の祭典アカデミー賞で、プレゼンターとして同性愛をネタにしたとしたら、LGBTQ+コミュニティを傷つけたことは確実なうえ、のちのち歴史に残る大炎上に発展していたことは確実。しかし当時は、そんな案さえも出てくるほどだったという。ジェイクもまた、当時の自分は悪意のないジョークには怒っていなかったと認める。しかしヒースは違ったよう。

画像: 『ブロークバック・マウンテン』のヒース・レジャー(左)、アン・リー監督(中央)、ジェイク・ギレンホール(右)。

『ブロークバック・マウンテン』のヒース・レジャー(左)、アン・リー監督(中央)、ジェイク・ギレンホール(右)。

「でもヒースは拒否した。当時の僕は、(同性愛に対するジョークは)ただのお遊びだろって感じだったから、『おぉ、オッケー…。まあなんでも良いよ』って感じだったんだけどね。ヒースはこう言ってた。『こんなの、僕はジョークだと思えないよ。同性愛を利用したジョークなんか言いたくない』」

 アカデミー賞といえば、映画関係者にとっては憧れの舞台。そこでオープニングのプレゼンターをするという大役は俳優にとっても名誉なことだけれど、ヒースはそれに惑わされず、自身の信念を貫いた。

愛を信じたヒース・レジャー

 ジェイクは、2019年に応じた米NBCのインタビューでも、当時は人を傷つけるからかいを、コミュニケーションだと誤解して行なう人は少なくなかったと振り返っている。「(同性愛者を演じた)僕をからかう人や、映画の中で僕が言ったセリフを批判する人を見たよ」と話したジェイクは、この時にも、そういったジョークに対するヒースの凛とした態度を明かしていた。

「ヒースは、決してそういったジョークは言わなかったんだ。誰かが映画のストーリーとかについてジョークを言おうとしたら、彼は、『やめろよ。これは愛についての話だぞ』って感じだったんだよ」

画像: 愛を信じたヒース・レジャー

(フロントロウ編集部)

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