「平らな虹」が出現
アメリカ・ワシントン州に住むセスナ・カッツという女性が撮影し、インスタグラムで公開した「水平な虹」が大きな反響を呼んでいる。
この水平な虹は、シアトルから13キロほど離れた場所にあるサマミッシュ湖の湖畔で撮影されたもの。英語では「ホリゾンタル・レインボー(水平な虹)」もしくは、「ファイア・レインボー(炎の虹)」と呼ばれる現象で、日本語での正式名称は「環水平アーク」という。
画像編集アプリなどを使って加工したのではないかと疑ってしまうほど、空が美しい虹色のグラデーションに染まっているかのように見えるこの平らな虹は、さまざまな条件がそろわないと発生しない激レアなもの。
太陽の高さが58度以上、氷の結晶を含む、霞がかった巻雲が空に漂っている必要があり、巻雲に含まれる氷がプリズム(※)のはたらきをして太陽の光を屈折させることで、水平アーチが創られるという仕組み。
※光を分散・屈折・全反射・複屈折させるための光学素子
セスナは「サーミッシュ湖でとてもクールな現象を目撃しました。水平の虹です! 私には、この虹が未曽有の時に直面している私たちに、不安やパニックに駆られるよりも、希望や愛を持ち続けようというサインのように感じられました。みなさん、安全に過ごしましょう」というコメントとともに水平な虹の写真を公開。
収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの世界的感染拡大に胸を痛め、不安を募らせる人々にエールを送った。
「平らな虹」が心に染みるワケ
古くから平和や平等、希望のシンボルとして愛されてきた虹やレインボーカラーは、新型コロナ禍でも、世界中の人々の心の拠りどころのようなものとなっている。
欧米では、自宅待機中の子供たちが描いた虹の絵に「Ça va bien aller(きっと大丈夫)」、「It’s gonna be alright(すべて上手くいく)」、「Stay Home(家で過ごそう)」というコメントを添えて、道路に面した自宅の窓に貼り出すことで、通行人を励ましたり、元気づけようという試みが人気に。
そんな虹が持つポジティブな意味にくわえ、今回目撃された平らな虹には、もっと深い意味を見い出す人が続出。
それは、この水平な虹が、感染者数増加を示すグラフをなだらかにして、医療崩壊などを防ごうという意味で欧米で使われている「Flatten the Curve(カーブを平坦にしよう)」というスローガンに呼応しているかのようだから。
現在世界中の人々が外出自粛やソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)により感染者の急増を抑えようと必死に取り組むなか、本来ならば曲線をなしているはずの虹が、平らな状態で出現したという神秘に多くの人が感じ入っている。(フロントロウ編集部)