テカシ・シックスナインがアリアナとジャスティンの「不正」を主張
2018年11月に所持していた銃による発砲や恐喝、ギャング関連の麻薬取引や武装強盗に関与していた容疑で逮捕され、その後、殺人の共謀を含む複数の罪で懲役2年の判決を下されたものの、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、当初予定されていた2020年末よりも半年以上早い4月頭に出所したラッパーのテカシ・シックスナインは、獄中で制作したという新曲「グーバ(Gooba)」をリリース。
残りの服役期間を過ごしていた軟禁中の自宅の裏庭で撮影した「グーバ」のMVの再生回数は、記事執筆時点で1.8億回を突破しており、MVの公開直後にテカシが行なったインスタグラムでのライブ配信は、歴代最高となる200万人の視聴者数を記録した。
出所後初という、彼にとっては“記念すべき”1曲となったグーバは、リリース後の週末に全世界で5000万回以上ストリーミングされ、テカシは「グーバ」で自身にとって初となる米ビルボードのシングルチャート1位を獲得できるはずだと確信。
しかし、フタを開けてみると、その週付けの全米シングルチャート1位に輝いたのは、シンガーのアリアナ・グランデとジャスティン・ビーバーがリリースしたチャリティ・コラボ曲の「スタック・ウィズ・ユー(Stuck with U)」。
2位に輝いたのは、女性ラッパーのニッキー・ミナージュとドージャ・キャットがコラボした「セイ・ソー(Say So)」のリミックスバージョン、そしてテカシの「グーバ」は3位という結果だった。
これに憤慨したテカシは、インスタグラムに投稿した動画を通じて、「チャート1位は金で買えるらしいぜ! 」と、アリアナとジャスティンのレコードレーベルが楽曲を大量購入して「スタック・ウィズ・ユー」が1位を獲れるようチャートを不正操作した、さらに、ビルボードが自身の楽曲「グーバ―」のストリーミング回数を半分近く少なく換算したなどと、独自のリサーチに基づいたという持論を展開して抗議した。
アリアナが長文コメントで反論
なぜかジャスティンではなく、おもに自分だけを名指しにした、このテカシの主張に対し、普段はこういった難癖には反応しない主義のアリアナも、これには、ひとこと言うべきだと感じたようで、インスタグラムに長文を投稿して反論。
チャートで上位を獲ることだけが自分が音楽をやっている理由では無いと以前から明言しているポリシーを改めて繰り返し、新型コロナウイルス禍のチャリティに協力する目的で楽曲を購入してくれたファンたちの力添えがあったからこそ、ジャスティンとのコラボ曲「スタック・ウィズ・ユー」が全米トップのセールスを記録したこと、そして、自身や2位を獲得したニッキーとドージャといった女性アーティストの成功を曇らせるようなことをしないで欲しいと、テカシの名前こそ出さなかったものの、完全にテカシ宛てとわかる言い方で諭した。
以下アリアナのコメントを全文訳。
「『スタック・ウィズ・ユー』をサポートしてくれて、チャリティに協力してくれて、ビルボードのシングルチャート1位に押し上げてくれたみんな、ありがとう。私たちはあなたを本当に愛してる。今日はお祝いすべきことがたくさんあるね。でも、まずは、いくつか言わせて。私のことを知っている人、私の動向を追ってくれている人は、数字というものは、私が何かをするうえで、何の原動力にもならないということは知っているよね。歌えるだけでありがたいし、私の歌を聴きたいと思ってくれる人たちがいることに感謝してる。むしろ、今ここにいられるという事実にも感謝してる。私はシンガーとしてのキャリアをスタートさせてから5年間、1位を獲ったことが無かった。でも、そんなことでは動揺しなかった。だって私は心の底から、音楽がすべてだって思っているから。そしてファンのみんなも私のすべて。それ以外には何も求めてなかった。本当だよ。
お祝いをするにあたって、普段ならスルーしているいくつかのことについて、話しておこうと思う(いつもなら、こういう騒動や奇妙な非難にはエネルギーは注がないようにしてるけど、これはちょっと騒ぎが大きくなりすぎたから…)。
曲を買ったのは、私とジャスティンのファン。私たちのファンが曲を購入してくれたの(でも、ルールに書かれていた通り1人最大4枚までね)。私たちとファンは苦楽を共にする超サイコーな運命共同体のようなもの。私は彼らがいてくれることを毎日、神様に感謝してる。みんなが私たちを勝たせようと戦ってくれるからってだけじゃなくて(今週みたいに、たとえ私が戦わないでってお願いしたとしても)、みんなは私が知るなかで最高な人たちだから。
ストリーミング回数よりも、楽曲のセールスのほうが多くカウントされるのは、あたりまえ。どんなに躍起になって否定しようとしても、それは確か。今週のチャート結果に満足していない人や、一生懸命頑張っている女性たちの評判を落とそうと頭をはたらかせることに時間を割いている人は(とくに、なぜか女性だけ批判する人ね…)、ちょっと謙虚になって考えてみてほしい。まずは、そこにいられることに感謝しようよ。曲を聴いてくれる人がいることに感謝をしよう。私たちは、すごく恵まれた立場なんだから。
私だって、これまでのキャリアのなかで、何度も“あとちょっとで1位だったのに”という経験をしてきた。でも私は文句なんて言わなかった。だって、私は今ここに居られるだけでも幸せなんだから。聞いてもらえるだけでも幸せなんだから。あなただってそう感じるべき。
今週トップ10入りした才能に溢れまくったライバルのみなさん、おめでとう! たとえ、3位だったとしてもね。この栄誉を与えてくれたビルボードにも感謝してる。そして、今週、私たちがとても重要なチャリティのために基金を集めるのに協力してくれたすべての人にありがとう。すごく愛してる」
ジャスティンも反論
テカシの“告発”を耳にしたジャスティンも、インスタグラムストーリーを通じて、チャートが不正操作されたという説を完全否定。
音楽業界の仕組みを明かしつつ、こう説明した。
「彼は、彼の楽曲のストリーミング回数がちゃんとカウントされていないって言っていたけど、ちゃんとされてるよ。ただし、彼が言っているのは全世界のストリーミング回数だ。全米チャートはアメリカ国内のストリーミング回数しかカウントされない。
僕らの楽曲について、6万ユニットが突然カウントされたって言ってたけど、それは、僕らが週の最後まで確かな数字を公表しないからだ。それが戦略っていうものだよ。
彼は僕らの曲のセールスのうち3万枚が、たった6枚のクレジットカードを使って購入されたものだから怪しいって言っていたけど、それは嘘だ。1枚のクレジットカードでは最大4枚までしか購入できないって明確なルールがあるんだから。もし買ったとしても5枚目以降はチャートの集計にカウントされない。ニールセン(※)はちゃんとそれをチェックしてるし、僕らのセールスデータは本物。だって、僕らのファンは素晴らしいし、彼らが買ってくれたんだから。正しくない情報で僕たちのファンベースの名声を傷つけないでくれ。
これは、僕とアリアナの曲。僕は彼女と協力して、素晴らしいチャリティのために募金を集められたことを誇りに思ってる。もし、彼女の名前を口にするなら、僕の名前もちゃんと言うことを忘れないで。だってこの曲は僕たち2人の曲なんだから」
※ 消費者の視聴行動や購買行動に関する米市場調査会社
テカシがアリアナを茶化す
アリアナの反論を目にしたテカシは、今度は、アリアナに宛てたメッセージを収めた動画を公開。
「アリアナ、君を攻撃しようとしているわけじゃない」と話したテカシは、文句があるのはビルボードだと強調しつつ、自身は、母親がストリートで空き缶を集め、それを換金して生活の足しにしていたこともあるほどの貧困家庭の出身で、かなり苦労をして現在の地位まで登り詰めたと説明。
自分が音楽チャートへの疑念を告発したのは、若い頃の自分と同じように貧しい子供や若者たちに、真実を伝えたくてやっていると語った。
以前、ドキュメンタリーの一部として公開された、貧しかった頃に家族で暮らしていた家や音楽活動を始めるために使っていたというパソコンなどを映した映像を公開して、一見、シリアスに力説していたようにも見えたテカシだが、その映像と対比させるかのように、動画の途中でアリアナが、シンガーとして本格デビューを果たす前、10代の頃に出演していた子供~ティーン向け米ニコロデオンのコメディドラマ『ビクトリアス』のコミカルなシーンばかりを集めた映像を公開。
まるでアリアナの過去のキャリアを茶化すかのようなこの行動には、アリアナのファンたちは怒り心頭となっている。
テカシは、アリアナを「君はすごく才能があるし、美しい」と褒め称えながらも、「恵まれている君と僕とではバックグラウンドが違いすぎる」、「君には僕の痛みなんか分からない」、「僕に謙虚になれって言うなんて…君が本当の謙虚さを理解しているとは思えない」とコメント。この少々、もとの話からは脱線気味なテカシからのメッセージには、アリアナは現時点では反応していない。
アリアナとジャスティンのマネージメントを手がける音楽マネージャーのスクーター・ブラウンも、インスタグラムへの投稿を通じて、チャートの不正操作は行なっていないとコメントしている。(フロントロウ編集部)