スプラッシュマウンテンが生まれ変わる
ウォルト・ディズニー・カンパニーが運営するリゾート事業の企画、開発、マネジメント、レジャー事業を行うディズニー・パークスが、人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」の変革に乗り出すことを正式発表した。
同社の決断は、全米および世界各国で活性化している黒人に対する人種差別に抗議するムーブメント「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/黒人の命も価値がある)」の後押しを受けて下されたもの。
刷新後は、ネット上でリクエストが多く寄せられた、ディズニーアニメ史上初の黒人プリンセスであるティアナをフィーチャーした、アニメ『プリンセスと魔法のキス』の世界観や物語の舞台となったルイジアナ州南部のニューオーリンズの風景をテーマにしたライドに生まれ変わるという。
スプラッシュマウンテンは、1946年公開のディズニー映画『南部の唄』をモデルにしているが、同作は、昔から黒人描写に関して批判の声が絶えなかった作品。
1880年に刊行された小説を原作とする『南部の唄』は、白人の少年ジョニーと農場で働く黒人のリーマスおじさんとの交流が描かれた、愉快でほのぼのとしたストーリーだが、奴隷制の影響が色濃く残っていた当時のアメリカで、白人と黒人が対等に交流することはありえなかったため、「白人と黒人の仲が良い」という設定が現実とあまりにもかけ離れていると全米黒人地位向上協会(NAACP)が抗議。世間からも批判が殺到したため、現在は世に出回っていない“お蔵入り作品”となっている。
ウォルト・ディズニー・カンパニーの元CEOで現会長のボブ・アイガー氏も「今日の世界においては不適切な作品」だと認めている『南部の唄』をテーマにしたプラッシュマウンテンには、以前から改変を望む声が上がっていたが、昨今のBlack Lives Matterの世界的な広まりの後押しを受けて、2万人以上がオンラインでの署名運動に賛同。ついにテコ入れが行なわれることが決定した。
ディズニーランド・リゾートの広報責任者を務めるマイケル・ラミレス氏は、公式サイトに投稿した声明の中で、「(ディズニーのテーマパークは)長い歴史において、幾度となくアトラクションのアップデートを行い、新たな魔法を追加してきましたが、スプラッシュマウンテンのテーマ改変は今日において非常に重要なことだと考えています。新コンセプトは包括的、つまり、すべてのお客様が共感し、インスピレーションを得られるようなものとなり、さらに、毎年来園してくださるたくさんの人々の多様性に語りかけるようなものとなる予定です」とコメントしている。
東京ディズニーランドのスプラッシュマウンテンはどうなる?
スプラッシュマウンテンが存在するのは、アメリカ・カリフォルニア州にあるディズニーランド・リゾート内のディズニーランドとアメリカ・フロリダ州ウォルト・ディズニー・ワールド内のマジックキングダム、そして、日本の東京ディズニーリゾート内にある東京ディズニーランドの3つのパーク。
しかし、今回、改変が発表されたのはカリフォルニアとフロリダにあるスプラッシュマウンテンのみで、東京ディズニーランドのスプラッシュマウンテンに関しては、現時点では改修が行なわれるとの発表はない。
『プリンセスと魔法のキス』の物語のその後
公式発表によると、新生スプラッシュマウンテンのテーマとなるのは、『プリンセスと魔法のキス』の物語のその後。“最後のキス”のその先の物語を描くことになるといい、「プリンセス・ティアナとルイス(※)と一緒に音楽の冒険に出ましょう」と、劇中に登場するおなじみの音楽とともに、ティアナや仲間たちがニューオーリンズに伝わる伝統的な祭り「マルディグラ(謝肉祭)」に向けて準備をする様子などが表現されるという。
※1巨大なワニのキャラクターで、ジャズを歌えたり楽器が演奏できる。いつか人間に混じってジャズの演奏をすることを夢見ている。
『プリンセスと魔法のキス』の英語版でティアナの声を担当した俳優のアニカ・ノニ・ローズは、スプラッシュマウンテン刷新の報せに「プリンセス・ティアナが、ついに米ディズニーランドとマジック・キングダムの両方に存在できることに心からワクワクしています!私たちが創り出した作品に情熱を持っていますが、ファンたちも、きっとすごく喜んでくれるでしょう。イマジニアー(※2)のみなさんが、私たちがずっと心待ちにしていた『プリンセスと魔法のキス』のマルディグラの祝祭へと誘ってくれます。すごく楽しみです!」と喜びのコメントを寄せている。
※2 世界のディズニー・テーマパークの設計・開発やアトラクションの企画・クオリティー管理などを担当する会社ウォルト・ディズニー・イマジニアリングの職員たち。