『ウォーキング・デッド』俳優で、2017年にバイセクシャルであることをカミングアウトしたダニエル・ニューマンが、LGBTQ+コミュニティに対する偏見や、コミュニティ自体が抱える問題について語った。(フロントロウ編集部)

ダニエル・ニューマン、偏見に苦言

 大人気ドラマ『ウォーキング・デッド』のシーズン6に登場した兵士ダニエル役で有名なダニエル・ニューマンは、2017年にバイセクシャルであることを公表。カミングアウト前からLGBTQ+の若者向けのシェルターでボランティアを務めるなどしてコミュニティをサポートしてきたダニエルは、最近ではLGBTQ+当事者に対するステレオタイプに問題を感じているようで、英Metroのインタビューでこう話した。

画像: ダニエル・ニューマン、偏見に苦言

「なにかにならなくてはいけないという事はないんだ。性に奔放である必要はないし、複数人と付き合わなくてはいけないわけでもない。みんなはバイセクシャリティを様々な角度から定義してるよ。僕は、個人的には好みとして定義してる。君は、1対1の恋愛をして良いんだよ。異性と付き合ってるから絶対にストレートというわけではないし、同じ性別の人と付き合ってたらゲイだなんてこともない。それはただ、君が1対1の交際をすることを選んだというだけなんだ。その他のことはすべてステレオタイプさ。バイセクシャルということは君は満足しないんだね、だとか、いつでも浮気するんだねとかね。バイセクシャルの人々は人と関わるのが好きで、(相手が)どっちでも良いんだ」

 LGBTQ+当事者は性に奔放、毒舌、面白い、などといったステレオタイプは、テレビ番組などのメディアを通して発信されてきた。しかしセクシャリティは、セクシャリティだけの話であり、もちろん性格に関係はない。ダニエルは、そういったステレオタイプに当事者たちが惑わされる可能性があることを危惧しているよう。

ダニエル・ニューマン、カミングアウトは重要

 そんなステレオタイプを崩すためにも、声をあげることは重要。2017年にカミングアウトしたダニエルは当時、その決断をするきっかけとなった出来事についてこう明かしている。

「ある女の子に『LGBTを支援してくれて本当にありがとう』と申し訳なさそうに言われたんだ。なぜ申し訳なさそうに言うのかと聞いたら彼女は『だってあなたはストレートだから』って言った。だから『僕はストレートじゃないよ』って言ったら、彼女に、『なぜ今までそれを公に認めてこなかったの?私たちの一生を変える力があるのに』って言われたよ。あれは、みぞおちに一発食らうほどの衝撃だったね」

 ダニエルが『ウォーキング・デッド』で演じた役柄は兵士。またプライベートでも、俗に言う“男らしい”タイプであるダニエルは、“当事者っぽくない”自分や、その他の多くの人にもカミングアウトしてほしいと感じているという。

「歴史的に、フェミニンな男性は悪者とされ、残忍な扱いを受けてきた。でも彼らこそが強みでもあり、ゲイカルチャーを構築してきた。というか、そうしなければならなかった。

一方で、“男らしい”男性たちは静かだった。なぜなら、ゲイやバイセクシャルだって気づかれないでいられたから。便利な話なんだよね。もし男性と結婚することになれば、その時に彼らはカミングアウトして、プライドを持つだろう。でも当面はひっそりとしていられる。(バイセクシャルであれば)女性ともデートするからね。静かにしていて、怒らず、職場でトラブルに巻き込まれず、家族とも揉めない。便利な空間だけど、ひどく致命的に気が滅入る。

文化というのは、多様性や、人々が自分自身でいられるかどうかにかかってる。だからもしあなたが(LGBTQ+の)文化のひとつの部分だけでも抑圧しているのであれば、あなたはLGBTQ+コミュニティ全体を傷つけてる」

ダニエル・ニューマン、LGBTQは同じではない

 LGBTQ+“内”の多様性を発信していくことを重要視するダニエルは、バイセクシャル。しかし2017年にカミングアウトした際には、多くのメディアが彼をゲイだと呼んだ。カミングアウトしてから数ヵ月後に、ダニエルは米Advocateのインタビューでこう話している。

「(アメリカ大手のメディアの)Peopleでさえ、僕のことをゲイと言ったからね。記者にはバイセクシャルであることについて話したし、彼女がいたこともあるとか、そういったことを話したよ。そして記者が、『いいですね。今は誰かと交際していますか?』と聞いてきたから、『はい。素晴らしい彼氏がいますよ』と言ったら、『いいですね。あなたがゲイだとカミングアウトしたことは良いことです』って。そしてその後、僕のことをゲイだと呼ぶ記事が世界中に出回った。僕は全然それでもかまわないけど、もし彼氏がいたら100%ゲイだと思われるのは興味深いことではあるね」

 ダニエルがその経験を明かしたように、LGBTQ+内の個々を混同することは、それぞれのセクシャリティが抱える異なる問題を見えにくくすることにも繋がる。例えば、同性愛カップルの男性同士のゲイカップルと女性同士のレズビアンカップルといえど、男女で賃金格差がある現代では、レズビアンカップルは収入面で深刻な差別を受ける。また、トランスジェンダーであれば戸籍や身体の性別を変えるために、他のコミュニティ当事者たちとは違う困難に直面する。LGBTQ+とひとくちに言っても、個々の当事者の置かれている環境はかなり違うもの。LGBTQ+グループだけでなく、その中の個々の違いをしっかりと認識していくことは重要だろう。(フロントロウ編集部)

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