長年の人気作品『ワイルド・スピード』
『ワイルド・スピード』は2001年から続く人気カーアクション映画。日本のファンからは『ワイスピ』という愛称で親しまれ、既に公開されている8作品の累計興行収入は、なんと5,400億円を突破している世界的人気作。
最新作にしてシリーズ9作目の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は新型コロナウイルス流行の影響により、公開日は2020年5月から2021年に延期となっており、新しく設定された全米の公開日は、2021年4月2日。日本での公開日は今後発表される。
そんな『ワイスピ』シリーズの中でも異色を放っているのが、2006年に公開されたシリーズ3作目の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』。本作の主人公は、シリーズの主人公であるドミニク・トレットでもブライアン・オコナーでもなく、米アリゾナから転校してきた高校生のショーン。さらに、物語の舞台もアメリカから日本へと変え、新たな伝説が刻まれることとなった。
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』では、シリーズの人気キャラクター、ハンが初登場。また、日本が舞台ということもあり、妻夫木聡や真木よう子、そして伝説の元レーシングドライバーの土屋圭市など、数々の日本人キャストも出演した。
そんな本作では、渋谷のセンター街など、世界でも有名な日本の景色が映し出されている。町並みや雰囲気からも日本の要素をたくさん感じられるのだけれど、実はその風景には大きな秘密が隠されている。
『TOKYO DRIFT』は日本であまり撮影できなかった⁉︎
本作の監督で、映画『スター・トレック BEYOND』やドラマ『S.W.A.T.』などの監督も務めているジャスティン・リンは、東京が舞台の本作を、日本で撮影したいと考えていた。具体的には、日本で最も混雑した場所の一つである渋谷のスクランブル交差点で、車が猛スピードで駆け抜ける絵を撮りたかったという。
けれども現実的には、東京は外国映画にとって撮影の許可を取るのが最も困難な場所の一つとして知られている。リン監督も、映画スタジオのユニバーサルもそのことについては承知済み。
日本を舞台にしたほとんどの海外映画は、日本ではない別の場所で撮影されている。1967年に公開された映画『007は二度死ぬ』は日本が舞台となっているけれど、実はそのころからずっと日本での撮影は規制が厳しい。交渉のプロセスには費用がたくさんかかる上に、面倒ごとが多いため、日本で撮影することはかなり少ないという。2003年にソフィア・コッポラ監督が映画『ロスト・イン・トランスレーション』を日本で撮影するために、長い時間をかけて交渉を続けたケースもあるけれど、リン監督は当時まだ新人だったため、交渉することができなかった。
そのため、実は『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』はほとんどアメリカのロサンゼルスで撮影されている。
許可なし撮影断行で逮捕⁉︎
しかし、どうしても撮影を諦めきれなかったリン監督は、日本ロケを無許可で敢行。驚くべきことに、現場で「何か」が起こったときのために罪をかぶるダミーのスタッフまで用意して、渋谷での撮影を行なったという。
撮影直後、すぐに警察がやってきてクルーはエリア外に追い出された。そのとき責任者であるリン監督を逮捕しようとしたため、ダミーのスタッフが「私がリンです」と名乗りを上げ、警察で夜を明かしたそう。
このようにして、ジャスティンはなんとか映像を撮ることはできたけれど、結局ほとんどの渋谷のシーンは特殊効果で作成された。一連の騒動については、ジャスティン監督自ら英Digital Spyで明かしていた。
2021年に公開されるシリーズ9作目の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』では、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で初登場したハンが再び登場する予定となっている。(フロントロウ編集部)