アンバー・ハードがジョニーに対する「暴力」を一部認める
俳優のジョニー・デップが自身を「Wide Beater(妻を虐待する者)」と呼んだイギリスの大衆紙The Sunの発行元である出版社New Group Newspapers(以下NGN)を名誉毀損で訴えている裁判では、ジョニーの元妻で俳優のアンバー・ハードが、当時アルコールや薬物を乱用しており、さらに異常なほど嫉妬深い性格のジョニーから、再三にわたり激しい家庭内暴力(DV)を受けていたと主張していることが最大の争点となっている。
アンバーは、計14回にわたってジョニーから身体的・精神的に暴行を受けたと訴えているが、ジョニーは、そういった事実はないと否定。逆に、アンバーから暴力をふるわれたと反論し、アンバーが自身との婚姻中にテスラ社CEOのイーロン・マスクや俳優のジェームズ・フランコといった複数の人物と不倫していたという疑惑についても追及している。
7月21日の証言2日目には、それまでジョニーに対する暴力行為があったことを一貫して否定してきたアンバーが、2015年の3月、ジョニーの暴力から身を守るために彼を拳で叩いたと認める場面もあった。
この時、初めてジョニーに手を出したと告白したアンバーは、その詳しい理由について、ジョニーが自身の妹のホイットニー・ヘンリケス(旧姓ホイットニー・ハード)を階段から突き落とそうとしたからだと説明。
アンバーは、自分がジョニーを拳で叩く直前、「ジョニーは彼女(妹のホイットニー)を階段から突き落とそうとしていました」と回顧し、「私は彼が昔のガールフレンドを階段から突き落としたという情報が頭をよぎりました。その相手はケイト・モスだったと記憶しています」と、過去に耳にした、ジョニーが1990年代に交際していたモデルのケイト・モスを階段から突き落としたらしいというエピソードが、ジョニーに攻撃をくわえるという咄嗟の行動に影響したと説明した。
「あの出来事は決して忘れません。(ジョニーを叩いたのは)数年間で、あの時が初めてでした」と語ったアンバーだが、これまでの法廷での証言と突き合わせても、一貫性に欠ける彼女の証言に対し、ジョニー側の弁護人は、「嘘八百なのでは?」、「その場しのぎで嘘をついているのでは?」と詰問。
すると、アンバーは「私は自分が経験したことに基いて語っています。私は首を絞められ、殴られ、性的暴行を加えられ、そのほかにも色んな事を経験しました」と反論した。
アンバーの妹が証言台へ
7月23日には、アンバーの妹のホイットニーが証言台へ。ジョニーと階段で争った際のアンバーの主張を裏づける証言を行なうとともに、ジョニーのアンバーに対する暴力は、2人が婚約する以前の2013年から始まっており、アンバーが二面性のあるジョニーと結婚するのには反対だったとも供述した。
アンバーがジョニーを攻撃したと認めた自宅階段での争いが起きた2015年3月当時、ホイットニーは、ジョニーが所有するロサンゼルス市内の高級ヴィンテージ・マンション、ザ・イースタン・コロンビア・ビルのペントハウス5室のうちの1室に無賃で居候していた。
ホイットニーは、ジョニーに階段から突き落とされそうになった出来事の背景について、隣室で寝ていたところ、ジョニーとアンバーが争う声で目を覚まし、2人の元に様子を見に行ったと説明。
ホイットニー曰く、ジョニーは階上に逃げたアンバーを追いかけて危害を加えようとしており、彼女はそれを止めようと2人の間に入ったという。「階段の上までたどり着いたジョニーは、アンバーに届こうと、私を後ろから引っ張りました。私は、後ろ向きに階段を転げ落ちてしまうのではないかと、恐怖を感じたのを覚えています」。
そう語ったホイットニーは、続いて、ジョニーが手を伸ばして彼女の体を押しのけ、アンバーに向かって突進したが、その瞬間「アンバーが急に前方によろめいて彼を叩き、『私の妹を叩かないで』と言いました」と証言。「どういうわけか、私は2人の間から押しのけられました。しかしジョニーが片手でアンバーの髪の毛を掴んだ時、私は彼らのすぐ隣にいました。私は彼がもう片方の手で、複数回、アンバーの頭をかなり強く殴打するのを見ました」とも語った。
アンバーがジョニーと婚約したと聞いて「吐き気がした」
ホイットニーは、このほかにも、裁判に提出した書面による証言を通じて、アンバーが以前からジョニーから暴力を振るわれていることを知っていたことから、アンバーから2013年にジョニーと婚約したことを告げられた際には「吐き気がした」とも陳述している。
ジョニーとアンバーの関係は「最初から激動だった」とし、自身は序盤からアンバーの体にアザや切り傷、火傷といった身体的な虐待の兆候があることに気づいていたとも明かした。
「私は彼女(アンバー)に、(ジョニーとの結婚は)悪いアイディアだと言いました。どうか、やめてほしい。絶対に良い方向に進むわけがない。もう彼とは終わりにするべきだと」とアンバーにジョニーとの結婚を考え直すよう懇願したというホイットニーは、アンバーに「どうして我慢してるの?」、「婚約したって、彼が叩くのをやめるわけがない」とも忠告したという。
ホイットニーはその後も何度もアンバーにジョニーによる暴力行為についてたずねたことがあったが、そのたびアンバーは何かしら言い訳をして交わしていたと証言した。
ホイットニーは、2014年には、ジョニーに直接、「なぜ彼女を叩くの?」とアンバーに対する暴力を指摘したこともあるというが、ジョニーは「だいたい事実を否定するか、『押しただけで、叩いていない』などと言い訳をするか、正当化しようとした」と説明している。
ホイットニーは、2014年から2015年までジョニーが所有するペントハウスで暮らしていたが、アンバーとジョニーが結婚した2015年に退居。その後、2016年にもう一度、ペントハウスの一室に入居したが、アンバーから夫妻の住居内の写真やプライベートな情報を売ったと疑われ、最終的には追い出されたと明かしている。
ホイットニーはアンバーからかけられた疑惑については否定しているが、姉妹の間には、しばらくの間、溝があったことは認めている。
アンバーが母親にメールで相談 父から母へのDVにも言及
ホイットニーが出廷したのと同日に行なったアンバーの証言では、アンバーがジョニーから暴力行為を受けたと主張している2013年3月に、母のぺイジ(2020年5月に他界)に宛てて、ジョニーは「暴力的」、「狂ってる」、「今にも爆発しそうな暴走列車に乗っているみたい」などと、DVについて相談したメールの内容も読み上げられた。さらに、ぺイジが酒やドラッグに依存していたアンバーの父から暴力を受け続けていたことなども明かされた。
繰り返すが、ジョニーは自身にかけられたアンバーへのDV疑惑について、一貫して否定している。連日、双方から信じ難くショッキングな証言が飛び出しているが、この名誉棄損裁判には、一体どう決着がつくのだろうか?
(フロントロウ編集部)