17歳の末期患者、ザック・ソビアックと家族の物語
ディズニープラスオリジナル映画『クラウズ~雲の彼方へ~』は、癌のため余命6ヵ月と宣告された実在の10代ザック・ソビアックが、親友のサミーと共に音楽活動をする様子を、家族や友人たちとの関係と共に描きだした作品。ザックが歌った「クラウズ」は2013年に米iTunes1位を獲得するほど大ヒットし、YouTube上での視聴回数は現時点で1,400万回を超えている。
映画をプロデュース・監督するのは、ドラマ『ジェーン・ザ・バージン』のラファエル・ソラノ役でも知られる俳優のジャスティン・バルドーニ。彼は、末期の病気と闘う人たちを主人公にしたドキュメンタリーシリーズ『My Last Days(原題)』の制作の過程でザックと出会い、のちにザックの母ローラ・ソビアックが執筆した伝記本『Fly a Little Higher: How God Answered a Mom's Small Prayer in a Big Way(原題)』をベースに、ザックと彼の愛する人たちの物語を映画化した。
これについて監督のジャスティンは、「今から5年半ほど前に、ローラに本を映画化していいか聞いたんだ。映画を作り始める前にザックは亡くなってしまったから、ローラや(ザックの父親である)ロブ、彼の家族と会話を重ねて映画を制作した。彼らが口を揃えて求めるのは1つだった。希望を与え、人をインスパイアする映画にして欲しいということ。暗くて落ち込むものではなく、生や愛を選ぶことを伝える映画にして欲しいとね」と、フロントロウ編集部に明かした。
「キャスティングは非常に難しかった」
監督のジャスティンは、「映画のキャスティングは非常に難しかった」と語る。その理由は、ジャスティン自身がザックや家族と個人的に親しい仲だったから。「ザックを演じられる人はいないと感じてしまったんだ。ザックはお調子者でありながら、すごく深みがあり、スピリチュアルで優しくて、さらに音楽の才能があるという非常にユニークな人だった。それをごまかすことはできない。だからザック役を見つけるために、何百人もの若手俳優をオーディションしたよ」と振り返る。
そして、4〜5回ものオーディションを重ねてザック・ソビアック役を射止めたのが、俳優、モデル、ミュージシャンとして多才に活動する22歳のフィン・アーガス。ジャスティンはフィンの配役を最終決断した日のことを振り返り、「ローラとロブ、(ザックの親友)サミー、(ザックの恋人)エイミーにフィンのオーディションテープを見せたんだ。そうしたら全員が、『オーマイゴッド、信じられない。(フィンを見ていて)ザックを感じた。彼はザックのエッセンスを持っている』って言った。それで確信したよ」と明かす。
ザック役以外のキャスティングも、ザックの家族や友人らの承認を得たうえで決まったと監督はこう話す。「誰が演じるかは本人たちに決めて欲しかった。だから僕は最適だと思った役者を本人たちに提示したんだけど、幸運なことに、全員がイエスと言ってくれた。今回のワンダフルなキャストはその結果生まれたものなんだよ」。
ザックの親友であり音楽パートナーでもあるサミーを演じるのは、元ディズニー・チャンネル・スターであり、ミュージシャンとしても来日経験があるサブリナ・カーペンター。ザックの恋人エイミー役のオーディションも受けたというサブリナは、「私はエイミーを演じるには変人すぎたの」と、サミー役に決まった経緯を笑いながら明かす。
ザックの恋人エイミーを演じるのは、映画『ジュマンジ/ネクスト・レベル』や『アナベル死霊博物館』で知られるマディソン・アイズマン。地毛はブロンドヘアのマディソンは、「サブリナと私は2人ともブロンドだから、当初はイメージがかぶらないかが心配されていたの。だから私は、サブリナとの読み合わせに髪をスプレーで茶色にカラーリングして参加した」と、オーディションの様子を振り返る。
ザックが最後の日々を最大限に生きられるように彼を応援して支えた母ローラを演じるのは、映画『スクリーム』やドラマ『ハウス・オブ・カード野望の階段』のネーヴ・キャンベル。実際にローラと対面して「親愛なる友人になった」と語るネーヴは、「悲劇や困難の中でも、家族を鼓舞して、支えて、みんながポジティブな姿勢で生きられるように努めた彼女の強さと勇気、そして正直さには心打たれた」と、フロントロウ編集部に語る。
劇中歌はすべて生パフォーマンス!音楽にも注目
ザックが最後の日まで希望と喜びを持って生きる様子を描いた『クラウズ~雲の彼方へ~』は、死の直前にミュージシャンとしてブレイクした彼の音楽にもスポットライトを当てている。しかも本作では、劇中歌はすべて生で歌唱されたもの。それもあってか、キャストたちの多くは、思い出のシーンとしてパフォーマンスシーンを挙げる。
ザックの楽曲「クラウズ」がブレイクした当時に曲を聴いて知っていたというフィンは、ザックのコミカルなキャラクターがすぐに伝わるオープニングのパフォーマンスシーンは、「ハイテンションでポジティブなトーンで描かれているけど、それはすごく重要なことだった。人生における愛や喜びについての作品だから、映画の方向性を伝える最高のオープニングだったと思う」と振り返る。
サミー役のサブリナは、幼なじみであり音楽パートナーであるザックとサミーが正直にぶつかり合った末に誕生した楽曲「フィックス・ミー・アップ(Fix Me Up)」がお気に入りの曲だそうで、「あのシーンは午前2時くらいに撮影したの。だから2人ともすごく疲れてもうろうとしていて、すごくエモーショナルだった。その時の生のヴォーカルが使われたから『やめて〜!』って感じだったけど、映画を実際に見てみたら、あれで正解だったとわかった。すごく正直なシーンだったから」と笑った。
そしてアディソンは、フィナーレのパフォーマンスシーンをお気に入りのシーンとして挙げる。「撮影現場にザックの地元の人たちがみんなで来てくれたの。そしてみんなで『クラウズ』を大合唱したんだ。本当にエモーショナルな体験だったから、映画を思うとあの瞬間がすぐに頭に浮かぶ」とコメントした。
18歳という若さで亡くなったザックの生き方と音楽を通して、希望と喜びを伝える映画『クラウズ~雲の彼方へ~』。最後に監督のジャスティンはこう語る。「ザックに誇りを持ってもらえたらと願っている」。
『クラウズ~雲の彼方へ~』
ディズニープラスで配信中
(フロントロウ編集部)