優等生キャラで知られ、世間の人々から「堅物な人」というイメージを持たれがちなナタリー・ポートマン。彼女がそんな印象を身に纏うようになったのは、幼くして“性の対象”にされた反動だった。(フロントロウ編集部)

「才色兼備で近寄り難い」世間が抱くナタリー・ポートマンの印象

 ナタリー・ポートマンに対してみなさんが抱いている印象にはどんなものがあるだろうか?

  12歳で出演したリュック・ベッソン監督の映画『レオン』で銀幕デビューを飾ったナタリーは、映画界で高い評価を受けながら、若くしてスポットライトを浴びる重圧や世間からの視線に押し潰されることもなく、高校時代はつねにテストで90点以上をキープし、成績はオールA。

 アメリカ屈指のエリート校であるハーバード大学とイェール大学にダブルで現役合格し、役者の仕事をセーブして学業を優先。卒業後には、ヘブライ大学大学院で中東問題の研究に参加した。

 俳優業では、2010年に映画『ブラック・スワン』でアカデミー賞の主演女優賞をはじめとする数々のアワードを受賞したほか、2016年の映画『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』でも放送映画批評家協会賞の主演女優賞を受賞。2018年には、さまざまな功績が認められ、“ユダヤ人のノーベル賞”とも呼ばれるジェネシス賞まで受賞している。

画像: 「才色兼備で近寄り難い」世間が抱くナタリー・ポートマンの印象

 まさに才色兼備で、世間には「真面目」、「優等生」、「ストイック」、「近寄り難い」といったイメージを与えてきたナタリーだが、そういったイメージは自身が意図的に作り出したものであり、10代前半で経験したトラウマが原因だったことをナタリーが明かした。


ティーンの頃から性的な対象として見られる

 映画『レオン』の公開当時12歳だったナタリーは、同作で、ジャン・レノ演じる中年の暗殺者と心を通わせる、あどけなさの中にもどこか妖艶さを秘めた少女マチルダを見事に演じて映画ファンを唸らせた。

画像: ©️GAUMONT BUENA VISTA INTERNATIONAL

©️GAUMONT BUENA VISTA INTERNATIONAL

 その翌年には、ピアニストの男性が13歳の少女に淡い恋心を抱く映画『ビューティフル・ガールズ』が公開。本作でも、大人の男性を魅了する美少女を演じ、批評家たちに絶賛された。

 これらの作品の影響もあり、周囲の大人たちやメディアは、まだローティーンだったナタリーを「ロリータ・コンプレックス(大人が10代前半くらいの少女を執着的に愛すること)」の象徴的存在としてもてはやすように。

 ナタリー自身はそれを嫌悪し、文学教授が初恋の人を彷彿とさせる14歳の少女に心酔する有名小説を実写化した1997年公開の映画『ロリータ』への出演オファーを辞退。ラブシーンなども敬遠するようになったというのは、有名な話。

 『レオン』の出演後に初めて受け取ったファンレターは、成人男性が彼女をレイプすることを夢想する内容だったと、ナタリーは、2018年に参加した『女性のマーチ(Women’s March)』で行ったスピーチで明かしている。


思春期の性の芽生えを封印 “砦”をつくる

 先日、俳優のダックス・シェパードのポッドキャスト『Armchair Expert with Dax Shepard』に登場したナタリーは、彼女よりも6歳年上であるダックスが、映画『ビューティフル・ガールズ』を観た当時、ナタリーが演じた美少女に魅力を感じながらも、「そうすべきではない」という複雑な心境に陥ったことを振り返ると、「自分がロリータの象徴として描かれていたことはよく分かっていたの」と、大人たちの思惑は承知していたと告白。

 そのうえで、「子供のうちから性の対象として見られてしまったことは、自分で自分の性的関心を奪ってしまうことに繋がったと思う。だって、私は怖かったから。『私は保守的で、真面目、だからみんな私を尊重するべき。私は賢い。そんな(性的な)目で私を見ないで』って振舞うことで、ようやく安全だと感じられた」と、思春期なら当然とも言える”性のめばえ”にフタをしようとしていたことも明かした。

画像: 映画『ビューティフル・ガールズ』より ©️MIRAMAX FILMS / Album/Newscom

映画『ビューティフル・ガールズ』より ©️MIRAMAX FILMS / Album/Newscom

 「その年齢だったら、性に関心があったり、欲望を抱くことは普通で、冒険してみたい、開放的になりたいという気持ちがあるのは普通。でも、年上の男性たちが自分に(性的な)興味を持っているという状況では、私は安全だと感じられなくて、『ノー、ノー、ノー、ノー、ノー、ノー』と拒絶するしかなかった」。

 そう続けたナタリーは、安心を得るために、自分の周囲に“砦”のようなものを築いていたとも話した。

 「多くの人たちは、私に対して、ものすごく生真面目で、潔癖で堅物で保守的だという印象を持っていると思う。でも、それって私自身が自分を守るために意識的に培ってきたものだと気づいたの。『もし誰かに尊敬してもらえたら、性の対象として見られることはないはず』という思いからね」。

画像: 1996年、映画『ビューティフル・ガールズ』のプレミアにて。

1996年、映画『ビューティフル・ガールズ』のプレミアにて。


ディズニースターとは真逆のチョイス

 人々から一目置かれる存在になることで、一部の人がまだ若い自分に対して抱いている性的なイメージを切り離し、自分を守ることにも成功したナタリー。「幸運なことに効果はあったと思う。実際、私は安全だと感じられたから」と、自分のやり方は間違っていなかったと評価している。

画像: 思春期の性の芽生えを封印 “砦”をつくる

 ナタリーが選んだ方法が、幼いイメージを脱却するために、あえて背伸びをするような行動に出る人が多いディズニーチャンネル出身のスターたちとは「まったく真逆だね」と比較したダックス。

 これに対し、ナタリーは、「本当だね」と同意しながら、「私も子供の頃、そういう番組のオーディションをいくつも受けたけど、1つも通らなかった。私が手にしたのはいつも、ダークで、ちょっとセクシーな少女の役。シリアルのCMのオーディションを受けても、審査員たちは『(この子は)絶対に無い』って感じだったもの」と笑っていた。(フロントロウ編集部)

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