アメリカ連邦議会の議事堂が占拠される
アメリカ時間2021年1月6日に、歴史の教科書に載るであろう出来事が起こった。
この日、アメリカのワシントンD.C.にある合衆国議会の議事堂では、2020年アメリカ大統領選挙におけるジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領の勝利を最終認定するために、上下両院合同会議が開かれていた。
しかし自身の敗北を認めないドナルド・トランプ氏は、ホワイトハウス近くで集会を開き、約1.5マイル(約2.5キロ)先の議会議事堂まで行進しようと呼びかけた。その結果、多くのトランプ氏支持者が議事堂へ押し寄せ、建物の中へ侵入し、一時議事堂を占拠。この過程で、あわせて5人が亡くなった。
ワシントンD.C.のミュリエル・バウザー市長は外出禁止令を出し、ワシントンの州兵1,100人が動員された。
この出来事は民主主義を脅かすものだとされる批判に加え、2020年に大規模発生した黒人の人権を叫ぶBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター/BLM)のプロテストの時には、そのデモの大多数が平和的であるにもかかわらず、警察側が暴力的な対応を取ることもあったため、警察の対応の違いもかなり大きな批判を浴びている。今回は、議事堂内で侵入者と警察官が一緒に自撮りを撮っていたところも確認されている。
一夜明け…、議事堂内の様子
その後、合同会議は再開され、7日未明にジョー・バイデン氏の勝利が認定された。とはいえ、議事堂内や周辺は、破壊されたり、汚されたりしたままの状態。ドアのガラス窓に残る靴底の跡や銃弾の跡、散乱するガラスなどのゴミ、スプレーで汚された内装などが、出来事の大きさを鮮明に伝える。
その掃除にあたる人々のなかには、黒人清掃員の姿が多く確認できる。今回襲撃された議事堂や、トランプ氏が集会を行なったホワイトハウスは、18世紀に黒人奴隷によって建てられた建築物。トランプ氏やその支持者は人種差別主義的な言動がたびたび問題になってきたけれど、アメリカの発展には黒人の存在がある。そして、そのような思想の支持者に破壊された建物を清掃する黒人作業員。
政治のトップが人種差別主義を隠さないことの深刻な影響について、ジョージア州アトランタ市長で、自身も黒人であるケイシャ・ランス・ボトムズ氏は、BLM運動の際にこう指摘していた。
「ホワイトハウスが様々な方法で、巧みな言葉を発言するのを聞いてきました。多くの人種差別主義者は、差別をあからさまにして良いと許可されたのでしょう。それ(許可)がなければ、2020年のこの時に、私達は(このような人種差別を)見なくて良かったはずです」
アメリカの民主主義の中心である場所を自国民に荒らされた今、人々の中に、どのような思いがあるのだろうか。(フロントロウ編集部)