企業にトランスジェンダーの雇用枠を
ブラジルのアレクサンドル・パジーリャ上院議員が1月末に提案したのが、企業は雇用の3%をトランスジェンダーの人々のための雇用枠として設けるというもの。米ロイター通信によると、対象となるのは、国の援助や契約を受けており、従業員数が100名以上の民間企業だという。
トキシック・マスキュリニティや宗教団体の力が強いブラジルでは、トランスジェンダーの人々の生活は危うい。2019年には最低でも124人のトランスジェンダーが殺害されて“トランスジェンダーにとって世界で最も危険な国”とされ、翌年2020年には、9月の時点で殺害数が前年の年間殺害数を超えた(※ブラジルのアクティヴィスト団体ANTRAによる調査)。
パジーリャ議員は、この法案を通して、国内のトランスジェンダーの人々が経験する差別や苦難と闘うと共に、トランスジェンダーの人々を貧困や迫害から救いたいとしている。
南米の他国でも雇用枠が広がっている
南米では他の国でも、トランスジェンダーの人々の雇用枠を設ける動きが広がっている。アルゼンチンでは2020年9月に、公営企業に対して雇用の1%をトランスジェンダーの人々にあてるよう指示。同年、アルゼンチン国立銀行は新規雇用の5%をトランスジェンダーの人々にあてると発表した。さらにウルグアイでは、多くの政府機関で雇用の1%をトランスジェンダーの人々にあてる法律が2018年に可決した。
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領はホモフォビック(同性愛嫌悪者)であることを「誇りに思う」とまで発言しているほど、反LGBTQ+な人物として知られているため、パリージャ上院議員の法案は強い反発にあうであろうと予想されている。一方でブラジルでは、2020年は2016年に比べて3倍の数のトランスジェンダーの人々が地方自治体の職に立候補するなど、昨今の差別に反発する動きも拡大しているため、今回の法案がどう動くかに注目が集まっている。(フロントロウ編集部)