役者が体張りまくりの『ターミネーター』
1984年に公開されたジェームズ・キャメロン監督による映画『ターミネーター』は、アーノルド・シュワルツェネッガーの俳優としての地位を確固たるものにし、その後も長く続く『ターミネーター』シリーズの起点となった。続編である『ターミネーター2』では、CGを使用した映像も観客を魅了。シリーズの中でも、とくに初期の作品は今でも多くのファンに愛されている。
そんな名作が誕生した裏には、俳優陣のかなりの努力もあり、サラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトンは、『ターミネーター2』での銃撃戦の撮影がきっかけの難聴を現在でも抱えていることを明かしているし、T-1000を演じたロバート・パトリックは拳銃を撃つ時に、“人間であれば”ついしてしまう「まばたき」をしなかったという逸話もある。
そしてもちろん、主演のアーノルドも大変な思いに耐えたシーンがある。しかしそれは、激しいアクションの撮影ではなかったそう。キャメロン監督との対談で、こう振り返っている。
「最悪だったのは、何か身体的なことをした時ではなかった。窓を駆け抜けたり、窓から落ちたり、ガラス片の上に立ったり、車の上に乗ったりということではなかったんだ。最悪だったのは、僕から煙を出すために酸をぶっかけられた時だよ」
『ターミネーター』では、ターミネーターことT-800の身体から煙が出るシーンがある。その時にキャメロン監督が取った行動は、カメラに見えない位置に煙の出るものを置いたり、CGを使ったりといったことではなく、主演俳優に酸をぶっかけること!
もちろん、ぶっかけられたとは言っても、彼の皮膚ではなく服にかけられたけれど、ご存知のとおり酸は危険なものなので、やけどの可能性や、失明する危険性まである。
アーノルドは、「酸では何が起こるか分からないだろ」と話し、恐怖を感じていたことを明かしたけれど、それを聞いたキャメロン監督は、「あれはすごくマイルドな酸だよ」と笑っており、“そういう問題じゃないだろ!”と突っ込みそうになってしまう態度だった。
アーノルドがかけられたのは酸ではなかった?
と、ここまでのエピソードは知っているファンも少なくはないはず。しかしじつは、アーノルドにかけられたのは酸ではなかった可能性があるよう。長年、彼のスタントダブルを務めたことで有名なピーター・ケントは、ウェブサイトThe Terminator Fansのインタビューで、こう答えている。
「あれはじつは、A/B smokeというもので、非常に不快なものではあるんだけど、酸ではないんだ。アーノルドが、赤ちゃんみたいにギャーギャー言ってただけなのさ!俳優ってやつは!ハッ(笑)」
アーノルドが大袈裟だっただけだと言いたげなピーターだけれど、では、A/B smokeとはなんなのか? A/B smokeを販売するサイトでは、これを使う時にはグローブを着用して目の保護をすること、煙を吸い込む可能性がある場合は使用しないこと、という注意事項が書かれている。
キャメロン監督もピーターも余裕な態度だったけれど、どちらの薬品にしても、かけられたアーノルドとしては文句を言いたくなって当然の代物のよう。(フロントロウ編集部)