『ハンガー・ゲーム』のハンドサインが現実に
2021年2月1日、ミャンマーで軍事クーデターが発生し、与党・国民民主連盟(NLD)を率いるアウンサンスーチー国家顧問が拘束され、軍が国家権力の掌握を宣言した。
その事件の直後から、ミャンマー国民の間であるハンドサインが使われているのを知っているだろうか。
Yangon General Hospital today pic.twitter.com/p3EBjPyeuh
— soe zeya tun (@soezeya) February 3, 2021
この人差し指・中指・薬指の3本指を掲げるハンドサインだが、実はジェニファー・ローレンス主演で映画化された『ハンガー・ゲーム』が元ネタ。独裁国家となった近未来を舞台に、市民が支配者たちに立ち向かうディズトピアSF。
3本指のサインは、映画版でジェニファーが演じたカットニスの出身地区固有のあいさつで、もともとは感謝や敬意、愛する人への別れを表すもの。それをカットニスが1作目のハンガー・ゲームで、仲間を弔うためにこのサインを中継カメラに向かって掲げたことをきっかけに、抵抗のサインとして民衆の間に広がっていった。
そして今、その3本指のサインは、物語を超えて現実の「抵抗のサイン」にもなっている。
抗議運動で使われている『ハンガー・ゲーム』のサイン
3本指のサインが現実世界で使われるようになったのは、2014年に発生したタイの反軍政デモにさかのぼる。民衆は軍事憲法の改正を求めるため、抗議の印として3本指のハンドサインを使い、中には逮捕されたり暴行を受けたりする者までいた。
最初にこのサインを使ったと言われるタイの運動家シラウィズ・セリティワットは、『ハンガー・ゲーム』の映画で使われた反権威主義的なサインが、当時の若者の抗議者たちの共感を呼んだと説明し、続けて「当時の反クーデターの状況が、映画『ハンガー・ゲーム』の中で人々が(独裁者)スノウ大統領に向かって3本の指を立てるシーンに似ていると感じたことも理由の一つだった」と声明を出している。
その後「抵抗のサイン」は香港にも広まり、2014年に勃発した民主化デモの雨傘運動でも使われた。
Dear #HungerGames. We've taken your sign as our own. Our struggle is non-fiction. Thanks. #ThaiCoup #Thailand pic.twitter.com/nGaYJIdj05
— M. Sethisuwan (@Sethisuwan) June 1, 2014
そして2021年になり、ミャンマー市民の間でこの3本指のシンボルが使われるように。英Guardianによると、3本指のサインはミャンマーで医療従事者によって最初に使用され、その後、若者の抗議者たちも使い始めたそう。
また、その後ミャンマーの学生が行なったデモでは、参加者が警察官にバラを送るという場面も見られた。ちなみにバラは、『ハンガー・ゲーム』の独裁者スノーのシンボルでもあり、映画の中で意味深に登場するものだった。
Hundreds of students and teachers took to the streets of Myanmar today to demand the military give power back to elected officials.
— The Recount (@therecount) February 5, 2021
Pro-democracy protestors offered roses to police and flashed a three-fingered salute, a sign of resistance borrowed from "The Hunger Games." pic.twitter.com/wgseKyNWTr
『ハンガー・ゲーム』という物語から生まれたものが、フィクションの枠を飛び出して現実世界の人々を勇気付けている。(フロントロウ編集部)