『ダークナイト』の音楽を手掛けた2人
2005年から2012年にかけてクリストファー・ノーラン監督が手掛け、映画業界におけるアメコミ原作作品の立ち位置を変えたと評される『ダークナイト』3部作は、その映像美やキャスティング、音楽など、映画に含まれるすべての要素で高いレベルに達し、それが上手く組み合わされ、あの完成度が達成された。
そんな『ダークナイト』シリーズの1作目である『バットマン ビギンズ』と2作目の『ダークナイト』では、ノーラン監督の他の作品でも音楽を手掛けたハンス・ジマーと、彼の友人で、映画『プリティ・ウーマン』や『シックス・センス』などの音楽を手掛けた作曲家のジェームズ・ニュートン・ハワードがタッグを組んだ。
ハンスとジェームズの作曲活動
ジェームズが米Colliderのインタビューで明かしたところによると、その創作活動はとても楽しいものだったよう。『バットマン ビギンズ』の時には、イギリスのロンドンにある同じ建物内で仕事をし、「彼の(部屋の)ドアは開いていて、彼が何をしているか聞くことができたし、僕のドアも開いていて、彼は僕が何をしているか聞くことができた」という。
『ダークナイト』の時にはアメリカのロサンゼルスに移ったものの、お互いのスタジオは300ヤード(約270メートル)の近さだったそう。また、2作目ではキャラクターによって担当を振り分け、ジェームズはトゥーフェイスの、ハンスはジョーカーの音楽を作るといったやり方で進めたという。
ジェームズにとって、ハンスやノーラン監督と一緒に仕事をすることはとても楽しく、映画の作曲は楽しくあるべきであるということを学んだという。
しかし、そんなジェームズは、これまで関わってきた2作品から続く最終章の『ダークナイト ライジング』では、作曲家として参加することを辞退した。高く評価され、グラミー賞を受賞し、ジェームズの良い思い出となっている経験もあったのに、一体なぜ? そこには、彼のこんな思いがあったという。
「ハンスはクリスと(『インセプション』を)したことがあったし、この2人が素晴らしい関係であることは僕にとって明らかだった。だから『ダークナイト ライジング』の時には、礼儀正しく、『2人でやったほうが良い。僕には他の映画もあるし、僕は(この作品で)すべてをやりつくしたと思う。君たちは素晴らしい』と言ったんだ。だから、僕は身を引いたよ。でもそれはすごくフレンドリーだったよ」
作品のためには、友人と監督だけで仕事を進めたほうが良い。そんな思いから、自分は身を引くことにしたというジェームズ。
彼とハンスが協力した前2作品も、彼が抜けたあとの最終章も、高く評価されている。カタチは違えど、2人の友情が『ダークナイト』3部作の音楽を生み出したことは確か。(フロントロウ編集部)