多様な会員から選ばれるCritics Choice Awards
アカデミー賞の前哨戦の一つである第26回放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)の映画部門、テレビ部門の受賞者が発表された。
Critics Choice Awardsはテレビ、ラジオ、オンラインの批評家を合わせた400名以上にのぼる投票者によって受賞者が決定する。2021年3月1日に開催され、たった87名の会員のうち黒人が1人もいなかったことが批判の的となったゴールデン・グローブ賞とは大きく性質が異なっている。
批評家協会のチーフは声明で「私たちはウェブサイト上に自信を持って写真つきで会員名簿を掲載しており、私たちのあいだの多様性を明確にしています。そこには、黒人やアジア系、ラテン系の人々の名前と写真が並びます。老若男女問わず。そして事実上、アメリカとカナダのすべての州と主要都市、そしていくつかの小さな町の声を代表しています」とコメントしている。
ストリーミング作品が多数の賞を受賞!
新型コロナウイルスによる影響がいまだに濃厚な2021年のCritics Choice Awardsでは、ストリーミングサービスによる映画が大きな勝利を収めた。
なかでもNetflix作品は、映画とテレビで72のノミネートを果たし、14部門を受賞。全39部門のうち3分の1以上を占める結果となった。なかでもドラマ『クラウン』が最多4部門、映画『マ・レイニーのブラックボトム』が3部門、『シカゴ7裁判』が2部問を受賞。
また、故チャドウィック・ボーズマンはゴールデン・グローブ賞に続き、『マ・レイニーのブラックボトム』で主演男優賞を獲得した。
さらに、2019年にサービスを開始したばかりで、2020年は1作品のノミネートと受賞に留まったAppleTV+が、コメディドラマ『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』で3部門の受賞となった。
『プロミシング・ヤング・ウーマン』が二冠
女性監督の活躍が注目されたゴールデン・グローブ賞と同様に、Critics Choice Awardsでも女性監督の作品が盛り上がった。
映画『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督はゴールデン・グローブ賞に引き続き続き作品賞と監督賞を受賞。Critics Choice Awardsで初めて同賞を受賞した中国出身の女性になった。
また、ゴールデン・グローブ賞では惜しくも受賞を逃した注目作『プロミシング・ヤング・ウーマン』からは主演のキャリー・マリガンが主演女優賞、監督のエメラルド・フェネルがオリジナル脚本賞を受賞。
現実の問題を反映させた作品が多数受賞
2021年のCritics Choice Awardsは、現実で起こっている問題を直接的に、または比喩的に描いた作品が多く受賞した。
女性への性暴力に警鐘を鳴らす映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』がオリジナル脚本賞、アジア系移民のアメリカでの立場を再確認するきっかけとなった映画『ミナリ』が外国語映画賞、黒人に対する人種差別反対運動“ブラック・ライヴズ・マター”にも通ずると話題になったドラマ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』が助演男優賞を獲得。
また、ブラック・ライヴズ・マターに通じる黒人の歴史を描いた作品として『Judas and the Black Messiah』、日常に存在する身体障がい者へ理解を促す『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』、現代社会を強い皮肉で風刺した映画『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』がそれぞれ受賞を果たした。
しかし、LGBTQ+を含むセクシャルマイノリティをメインで描いた作品は受賞を逃す結果となった。
2021年3月16日に発表されるアカデミー賞のノミネーションに、今回のCritics Choice Awardsの結果はどの程度反映されるのだろうか。(フロントロウ編集部)