アカデミー賞を軽視するよう命令
香港を代表するテレビ放送局TVBは、2021年に開催される第93回アカデミー賞の授賞式を生放送しないことを決定した。1969年以来、同アワードを生放送し続けてきた同社にとっては、異例の措置といえる。公式の声明によると、アカデミー賞を放送しないのは、「純粋に商業的な決定」だという。
しかしこの決定は、短編ドキュメンタリー部門に、香港で起きた民主化運動に関するドキュメンタリー『Do Not Split』がノミネートされたことに端を発する、中国内での反発が影響していると考えられる。
また、作品賞、監督賞を含む6つの部門でノミネートを果たした映画『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督も、過去に発した中国批判とも取れる発言を切り取られ、大きな批判を招いていることも一つの要因。
北京出身のクロエ・ジャオ監督は、当初は中国メディアで「中国の誇り」として報じられていたものの、2013年に米Filmmakerに語った「いたるところに嘘がある」という発言が切り取られ、SNSを中心に中国国内で大問題に。
そのインタビューは、ジャオ監督にとって初めての長編映画『Songs My Brothers Taught Me』についてのもの。ジャオ監督が、主人公であるネイティブアメリカンの少年少女たちの苦悩は自身の幼少期に触発されたものだ、と説明する中で、「いたるところに嘘がある」、「そこから決して逃げ出せないだろうと感じていた」と語っていた。
米Bloombergは3月初めに、中国当局の宣伝部門がすべての地元メディアに対し、アカデミー賞を生放送せず、賞の報道を軽視するように命じたとも報道していた。
現在、中国のソーシャルメディアプラットフォームからは『ノマドランド』の宣伝は削除され、『Do Not Split』の報道もほとんど行なわれていない。(フロントロウ編集部)