ホラー映画『ザ・スイッチ』に出演しているミシャ・オシェロヴィッチが、10代のころ同性愛の「治療」施設に連行された際のショッキングな出来事を明かした。(フロントロウ編集部)

新感覚の“入れ替わりホラー”映画!『ザ・スイッチ』

 気弱な女子高校生と連続殺人鬼の身体が入れ替わってしまったことから巻き起こる驚きの出来事を描いた映画『ザ・スイッチ』は、『パラノーマル・アクティビティ』などを手がけたジェイソン・ブラムが制作に携わり、『ハッピー・デス・デイ』シリーズでその名を知られるようになったクリストファー・ランドンが監督を務めた異色のホラー。

 そんな本作で主人公の友人として登場する男子高校生、ジョシュ役を務めたミシャ・オシェロヴィッチは、ノンバイナリーであることを公表している俳優。

 ノンバイナリーとは、男性・女性どちらかだけに分類・限定されないジェンダー・アイデンティティのことで、「第3の性」と呼ばれることもある。

 現在はクィア(※)でありノンバイナリーであることを明かしているミシャだけれど、幼い頃は自らのアイデンティティを明かせず、かなり荒んだ10代を過ごしたという。

※クィア(Queer)は、セクシャル・マイノリティーの総称。「クィア」はもともとは「風変わりな」「奇妙な」という意味の言葉で、LGBTQ+に対する「ヘンタイ」「オカマ」という意味の蔑称として使われていた。しかし時代の変化とともに、当事者たちが逆に自分たちをエンパワーするためにポジティブな言葉として使い始め、現在ではセクシャル・マイノリティーの総称として使われている。ジェンダーやセクシャリティを包括的に論じる学問、qeer studies(クィア・スタディーズ)も存在する。

本当の自分を明かせずに過ごした幼少期

 ロシア系移民の両親のもと生まれ育ったミシャは、ノンバイナリーやクィアであることを隠しながら成長する中で、自分の存在が認めてもらえていないと常に感じていたことを米them.のインタビューで明かした。

 ミシャは高校1年生になって初めて心を通わせることができる仲間に出会えたそうだけれど、不幸にも、ミシャがその仲間から学んだのは薬物乱用の世界だった。精神的な問題や摂食障害を抱えていたミシャは、薬物の使用を重ねるうちに、深刻な依存症になってしまったという。

 その後、家出をしたり、病院への入退院を繰り返したりしているうちに、ミシャは地元の2つの高校を退学になってしまい、両親は最後の手段として、ユタ州の施設にミシャを送ることに決めた。

まるで“拘置所”…問題を抱えた子供たちを「治療」する施設の実態

 15歳だったミシャが連れて行かれた施設とは、LGBTQ+であったり、学校の成績や精神面に問題を抱えていたり、非行を繰り返したりといった「問題」を抱えた子供たちを「治療」する施設だった。

 米国では年間約1,100億円(10億ドル)以上の収益をあげているがあると言われている「問題児産業」は、ブートキャンプや寄宿学校など、親が子供の「更生」を願う「セラピー」と行なうとして宣伝されている。こうした施設の多くは完全に合法ということになっているけれど、未成年者の性的、身体的、精神的な虐待を助長するという報告がある。

 「屈強な男2人が現れて、なんの説明もなく真夜中に連れて行かれます。ユタ砂漠にある最初の治療施設に入れられました」と、両親が雇った2人の男に家から連れ出された夜を振り返ったミシャ。

 施設はまるで拘置所のようで、「いたるところに警備員がいて、誰かに見られながらおしっこをしたり、裸で所持品の検査をされたり、寝ているときに15分ごとに懐中電灯で照らされて、自殺していないかどうか確認されたり」したそう。

 さらに施設の人々は、ミシャが“クィアっぽい仕草”をすると罰を与え、掃除や運動、セラピーなどの疲れる作業を絶え間なく受けさせ「打ちのめした」という。ミシャは、「外界とのコミュニケーションが遮断されたまま、自分が間違っていると言われ続けることで、生産的な社会の一員になろうとする、見せかけだけのティーンになりました」と語った。

 その後、施設から出ることができたミシャはマサチューセッツ州の芸術寄宿学校のオーディションを受け、見事合格。最終的にはモントクレア州立大学で演技の学士号を取得するまでになった。

 「私は、自分が経験したことの悲惨さや憂鬱さの中で生きようとはしていません。その経験を通して、何かポジティブなことをしようと思っています」と語るミシャは、今では俳優として活動しながら、LQBTQ+コミュニティのメンタルヘルスを支援する活動に積極的に参加している。

 いつかは脚本家と監督になりたいと話したミシャは現在、「非常に自伝的な」作品に取り掛かっていると語った。(フロントロウ編集部)

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