監督が語る『プラダを着た悪魔』の衣装秘話
ファッション雑誌の鬼編集長ミランダのもとに新人アシスタントとして雇われた主人公アンディが、ファッション業界で奮闘しながら成長していく過程を描いた同名小説を映画化した『プラダを着た悪魔』は、2006年に公開され大ヒットを記録。
ファッション業界の話ということで、劇中でキャストが着用しているのは、豪華なハイブランドのアイテムばかり。
しかし、米Vogueの編集長であるアナ・ウィンターをモデルにしていると言われている作品なだけに、衣装を借りるのが大変だったとキャストやスタッフが集まった米Entertainment Weeklyのインタビューの中で明かされた。
アナの反感を食らわないようにデザイナーは逃げ腰
映画のもととなった同名の原作『プラダを着た悪魔』の作者であるローレン・ワイズバーガーは、過去にVogueで編集長のアナのアシスタントをしていた経験はあるが、同作の登場人物であるカリスマ編集長ミランダ・プリーストリーのモデルは「アナではない」と表向きには否定。しかし、現実と重なる部分も多いことから、「ミランダ=アナ」と思っている人は多く、実際に米Entertainment Weeklyのインタビューの中でミランダを演じたメリル・ストリープは「彼女の会社での立場に興味があったの」と、アナをインスピレーションにしていたことを明かした。
劇中の衣装は、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』などを手がけたパトリシア・フィールドが担当し、メリル・ストリープの衣装を4週間かけてダナ・キャラン(Donna Karan)、プラダ(Prada)、ザック・ポーゼン(Zac Posen)、リック・オーウェン(Rick Owens)などのブランドで約150点の衣装を作りあげるも、ファッション界の重鎮であるアナを敵にまわしたくないデザイナーが多かったため、衣装を借りるのにひと苦労。
その時の様子を監督のデヴィッド・フランケルは「(当初は)映画に出演したがる著名なデザイナーはいなかった。彼らは、アナの怒りを買いたくなかったんだ。中にはショールームを見せてくれたり、脚本の信憑性についてメモをくれたりする人もいたが、彼らは(出演という方法で)参加はしたくなかった。当初、パット(パトリシアの愛称)は多くのデザイナーから服を借りるのに苦労していたよ。きっとアナは怒らないだろうと言って、その状況を打開してくれたのはプラダだったと思う」と語った。
アナのひと言で全てが決まると言われているファッション界では、アナに目をつけられると業界から干される可能性も。そのため、ブランド側はアナに配慮して作品に衣装を貸すのに二の足を踏んだよう。ところが結果的に多くのブランドの服が劇中に登場し、ファッション好きに愛される作品となった。
(フロントロウ編集部)