ディオールとトラヴィスがまさかのコラボ
各ブランドが最新コレクションを発表するなか、デイオール（Dior）もサマー2022メンズコレクションを発表。ここで発表されたのが、ラッパーのトラヴィス・スコットが率いるレコードレーベル、カクタス・ジャックとのコラボコレクション「カクタス ジャック ディオール」。
カクタス・ジャックといえば、これまでマクドナルドとコラボしたり、プレイステーション5とコラボしたりと様々なブランドとコラボし、それぞれが大ヒットを記録。
そんなカクタス・ジャックが、今度は一流ブランドのディオールとコラボし話題になった。ディオールのアーティスティックディレクターであるキム・ジョーンズといえば、ルイ・ヴィトンとシュプリームのコラボを実現させたデザイナーで、これまでも驚きのコレクションを展開してきた。
2人の友人、2つの文化、2つの時代の対話から生まれた今回のコレクションは、先駆的でモダンなミュージシャンのアイデンティティとパリを代表するクチュールメゾンのヘリテージを探るようなもの。
つながりを育み、絆を見出すかのように、ショーの会場はクリスチャン・ディオールの幼少期を想起させるバラ園からトラヴィスが生まれ育ったヒューストンのサボテンの庭園へと進化。かつてクリスチャン・ディオールが感銘を受けたグランドキャニオンと広大な砂漠はモーブ、カフェ、ピスタチオ、ペールブルーなど日に焼けたようなカラーパレットに反映され、ムッシュディオールのオートクチュールを彩る。
コレクションを支えるテイラリングは、メゾンのサヴォワールフェールを反映。ハイウエストで裾にかけてゆるやかなフレアのパンツとアームホールの細いオーバーコートは、ディオールが1956年に発表した「アロー」ラインの進化をなぞる。
身頃の高い位置で留める「テイラーオブリーク」は、フォーマルなタッチを加えることでスポーツウェアの要素とのコントラストを演出。トラックパンツにはクチュールのディテールが添えられ、ツアーグッズを模したウォッシュ加工のTシャツには刺しゅうとハンドペイントが施されている。
トラヴィスは、ディオールのロゴを手描きのグラフィックでアレンジし、オリジナルのロゴがプリントや刺しゅうとなってコレクションに登場。その他にも、ヒューストンの地形や「カクタスジャック」のキャラクター、そしてディオールのアーカイブから取り入れたイメージなどのモチーフが架空の旅を連想させるパッチとなり、バッグやレザーのスーベニアジャケットを飾る。
また、アクセサリーも特徴的で、「ディオールオブリーク」が「ジャック」のスペルでアレンジされ、ディオールのモノグラムに大胆な遊び心が取り入れられている。1960年代のアーカイブから取り入れた「ダイヤモンドモノグラム」は、新たなグラフィックロゴのキャンバスとして登場。
スケートカルチャーにインスパイアされた新作のスニーカーには、さまざまな要素が取り入れられ、傾斜したプラトーソールが1990年代のスタイルを思い起こさせる。
また、キムは今回のコレクションで初めてディオールファインジュエリーのアーティスティックディレクターであるヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌとのコラボレーションによるファインジュエリーを発表。ショーのために特別に制作された「カクタスネックレス」は、プレシャスストーンをまとう。
今回のショーのためだけの特別な芸術作品としてキム、トラヴィス、そしてディオールはアメリカの著名なコンテンポラリーアーティストであるジョージ・コンドとコラボ。アメリカンポップの感性とヨーロッパの名画とが対話しているかのような作品は、見事なまでにコレクションのテーマを引き立てる。ジョージは本コレクションのために、ハンドペイントシャツのコレクションを制作。1つとして同じもののないこの作品は、ショー後にオークションにかけられ、その収益が次世代のクリエイティブな才能をサポートするための奨学金に充てられる。（フロントロウ編集部）
