ディズニーのCEOであるボブ・チャペックが、2021年9月3日より公開のマーベル映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のリリースは「興味深い実験」だと発言したことが波紋を呼んでいる。(フロントロウ編集部)

アジア系ヒーローが主人公『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

 2021年9月3日より日米同時公開となるマーベル映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、MCU初のアジア系ヒーローを主人公にした作品。中国出身のカナダ人でドラマ『96時間 ザ・シリーズ』や『Kim's Convenience』などに出演した俳優のシム・リウ(劉 思慕)が主演を務める。

 さらに、アジアが誇る名優トニー・レオンがシャン・チーの父親役で出演。監督は映画『ショート・ターム』や、『黒い司法 0%からの奇跡』を手掛けたデスティン・ダニエル・クレットンが務める。

 そんな本作のリリースについて、MCU作品を制作しているマーベル・スタジオを擁するウォルト・ディズニー・カンパニーのCEO、ボブ・チャペックが物議を醸す発言をした。

ディズニーCEO、『シャン・チー』のリリースは“実験”

 ディズニーは新型コロナ禍における対策の一環として、劇場のみで公開予定だった『ブラック・ウィドウ』や『ジャングル・クルーズ』、『クルエラ』などの映画を、同社の配信サービスであるディズニープラスでも同時に配信するという手法をとっていた。

 一方、デルタ株の発生により再び新型コロナウイルスの感染者が増えているが、現時点では、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は劇場公開のみの予定となっている。

 ボブ・チャペック氏はそれについて今月行なわれたディズニーの決算報告で、「我々にとってこれは興味深い実験になると思います」とコメント。さらに、「マーベルの作品を45日間劇場で公開した後にサービス(ディズニープラス)に移行できるという見通しは、我々の作品の今後の動きに役立つ新たなデータポイントになるでしょう」と、『シャン・チー』の劇場オンリー公開がまるでデータを取るための行為だと取られるかのような発言をした。

シム・リウ、「私たちは実験ではない」

 このボブ・チャペック氏の発言に対し、主演のシム・リウは自身のツイッターで抗議のメッセージを発信。

 「僕たちは実験ではない。我々は過小評価されている弱者だ。ガラスの天井(※)を壊す者だ。困難な時を経ても続く文化と喜びを祝い続ける者だ。…僕たちはサプライズだ。(『シャン・チー』公開日である)9月3日に歴史を作るために、気合を入れている。僕らに加勢して」

※「ガラスの天井」とは、資質・実績があってもマイノリティを昇進させようとしない社会における見えない障壁。

 チャペック氏の「実験」という発言をはっきりと否定し、ハリウッドで過小評価されてきたアジア系人種が主人公の本作を盛り上げるべくファンに語りかけたシム・リウ。今回の発言に対し、ディズニー側はコメントを出していない。

 映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』2021年9月3日より劇場公開。(フロントロウ編集部)

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