アフガニスタン、タリバンが政権を掌握
2021年8月15日。アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが国内のほぼすべての州都を支配下に置き、首都カブールに進攻。大統領府や政府庁舎を制圧し、政府に対する勝利宣言を行ない、アシュラフ・ガニ大統領も自身のフェイスブックで出国したことを認めたことで、政権は事実上、崩壊した。
タリバンは1996年に政権を樹立したが、2001年にアメリカ軍などの軍事作戦によって政権が崩壊。しかしその後も反攻の機会をうかがっており、アメリカ軍が8月末までの完全撤退を進めるなかで、各州都の制圧を進め、8月15日に政府に対する勝利宣言を行なった。
カブールの国際空港には国外脱出を望む人々が数千人押し寄せており、離陸する飛行機にしがみつき、上空から落下して命を落とした人も確認されている。タリバン政権によって様々な物事が起こると予想されるが、とくに女性たちの人権が奪われることが深く危惧されている。
タリバン政権下、人権を奪われる女性たち
旧タリバン政権下では、少女たちが学校に通うことや女性が働くことが禁止され、女性が外出する際には男性の付きそいが必須とされた。また、女性は頭からつま先までを覆うブルカを着なければいけなかった。医療現場では、女性患者は衣服を身につけた状態でしか診察を受けることができず、死亡率の上昇につながったとされている。
2020年のUNESCOの発表によると、アフガニスタンの識字率は43%で、2016/17年の34.8%よりも改善しており、15歳から24歳の年齢では65%にのぼる。一方で男性の識字率は55%であるのに対し、女性の識字率は29.8%となっており、性別による教育格差が存在することが分かる。
しかし、この20年で女性の自由は増えた。アフガニスタンでソフトウェア開発企業のCEOを務め、アフガニスタンのIT企業で初の女性CEOのひとりであるロヤ・マハブーブ氏が4年前に創設したガールズ・ロボティクス・チームは、15歳から17歳の少女が対象で、2017年には、アメリカで開かれた国際ロボットコンテストに出場し、「果敢な功績賞」を受賞。新型コロナウイルスのパンデミック中には、車の部品などを再利用した人口呼吸器を開発した。そんな彼女たちは現在、国外脱出のために必死に動いている。
また、パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えていたマララ・ユスフザイ氏が、2012年にパキスタン・タリバン運動から銃撃を受けたことは多くの人の記憶に残っている。
タリバン政権は現在のところ、今後も女性は教育を受け、働き続けることができるといった旨のコメントを発表しているが、米ロイター通信によると、7月からすでに女性たちが職場から追い出されるという出来事が複数件確認されている。
カブールで女性の人権のために闘う女性は、コンコーディア大学のHoma Hoodfar教授に対し、「彼らの中心にあるイデオロギーは原理主義、そしてそれはとくに女性に向けられたもの」であるとし、タリバンを変革することは不可能だと話した。
また、アフガニスタンのヘラートに住む女性の大学教授は米Financial Timesの取材で、すでに、頭からつま先までを覆う服チャードルを着ることを選んだと話し、ブルカの着用がふたたび義務化されることを危惧しているという。そして、現時点で大学への入校は禁止され、その間も給与は払い続けられるが、今後女性が大学に入れるかどうかを決定していくと伝えられたと明かす。
また彼女は、教育のカリキュラムにおいて、英語や数学、物理学といった内容が削減、もしくは削除され、代わりにイスラム教に基づく内容が増えることを危惧しているという。
アフガニスタンでは、すでにトルコやインドの昼ドラがイスラム教に基づく内容に変更されており、街中では、タリバン政権からの罰を恐れる人々が、女性が写るポスターを剥がしていることが確認されている。
アフガニスタンに住む女性たち、現在の思い
アフガニスタンのニムルズ州で副知事を務めるRohgul Khairzad氏は、ニムルズ州ザランジの女性たちが書いたという手紙を米nbcに伝えた。
「旧タリバン政権は、イスラム教では女性たちが勉強することも、働くことも許されているにもかかわらず、それを許さないとした。男性はすべての時代でその権利を与えられてきた。私たちはそれが明けるまで、数えきれないほどの恐怖があることに気がついている」
20年前に12歳で成人したおじと婚約されられ、同居を強いられるも、タリバン政権の崩壊によって自由を得て、教育を受け、働き、独身でいることを選べた女性は、米Financial Timesにこう告げた。
「私はブルカを20年前に捨てた。私はあの屈辱をもう二度と受け入れない。誰かと強制的に結婚させられることも」
(フロントロウ編集部)