ベネディクト・カンバーバッチ新作、『ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ』
世界三代映画祭の一つである第78回ベネチア国際映画祭がイタリアのヴェネツィアで開幕した。
コンペティション部門に出品され、最高賞である金獅子賞を競う映画『ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ(原題:The Power of The Dog)』で主演を務めるベネディクト・カンバーバッチは、同作でゲイ役を務めることについて、コメントした。
映画『ザ・パワー・オブ・ザ・ドッグ』は、映画『ピアノ・レッスン』でカンヌ映画祭史上、女性監督として初のパルムドールを受賞した歴史的名監督ジェーン・カンピオンの最新作。米モンタナ州で大牧場を経営する裕福で冷酷なフィル(ベネディクト・カンバーバッチ)は、共同経営者である弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)が未亡人と極秘結婚していたことを知り、残酷な仕打ちを開始する…。
ベネディクト・カンバーバッチ、ゲイ役を務めるにあたっての考え
そんな本作でベネディクト演じるフィルには未亡人の息子と関係を深めていく描写があるのだが、ベネディクトは、何も考えずにその役を引き受けたのではないと語る。
「レプリゼンテーション、多様性、包括性についてはすごく気をつかっている」とコメントしたベネディクトは、「この仕事の魅力の一つは、この世界で、この特定のキャラクターには、プライベートにおいて見えないものがたくさんあるというところだった」と続けた。
最近、LGBTQ+の登場人物をストレート/シスジェンダーの俳優が演じる「ストレート・ウォッシング」が話題を呼んでいる。これは、LGBTQ+であることをカミングアウトしている俳優が起用される役が限定されるという問題を業界が抱えるなか、ストレート/シスジェンダー(※)の俳優がLGBTQ+の役まで演じてしまうことで、LGBTQ+の俳優のチャンスを奪ってしまっているという議論。
※生まれた時に割り当てられた性別と性自認が一致している人。
ベネディクトは、「何も考えずに役を引き受けたわけではない。『私たちのダンスカード(※)は公開されなければならないのだろうか』という気持ちも少しある。私たちの性の歴史におけるプライベートな瞬間をすべて説明しなければならないのだろうか?私はそうは思わない」と付け加え、演者の性的指向は必ずしも明かされるべきではないのではないかという考えを示した。
※舞踏会においてダンスごとに踊る相手の予定をメモしておくカード。ここでは、性的な関係を結ぶ相手という意味。
そして、「ジェーン(・カンピオン監督)は私たちをそれらの役の演者として選んだ。それがこの質問に対する彼女の答えだ」と明かした。
ちなみにベネディクトは2014年に公開された映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でLGBTQ+を演じた経験がある。「ストレート・ウォッシング」については、俳優のニール・パトリック・ハリスやクリステン・スチュワート、ダレン・クリスをはじめとする様々な俳優が意見を寄せており、議論が続いている。(フロントロウ編集部)