『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のキャリー・フクナガ監督が、過去の『007』作品を批判。新作で取り組んだことを明かした。(フロントロウ編集部)

キャリー・フクナガ、過去の『007』を批判

 10月1日に、ついに待望の劇場公開となる『007』シリーズ最新作の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』。シリーズ25作目となる本作は、6代目ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグの最終作。そのことはもちろん注目を集める理由の1つだが、本作には別の視点から厳しい目も向けられている。

 前作『007/スペクター』が公開された2015年の2年後に、性暴力や女性差別に声をあげるMeToo運動がハリウッドを起点として全世界で広く発生した。1962年から続く『007』シリーズにおける女性キャラクターの描き方や扱い方に問題があることは長らく指摘されてきたことであり、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』ではどのような改善がみられるのかという点には関心が寄せられている。

 そんななか、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でメガホンを取ったキャリー・フクナガ監督が、米Hollywood Reporterのインタビューで、過去の『007』作品を厳しく批判した。

 「あれは『サンダーボール作戦』か『ゴールドフィンガー』だったっけ。ショーン・コネリーのキャラクターが女性をレイプしたといえるのは? 彼女は“ノー、ノー、ノー”って感じなのに、彼は“イエス、イエス、イエス”という感じだった。あれは今ならアウトだ」

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のジェームズ・ボンド

 『007』シリーズの3作目である『ゴールドフィンガー』、4作目である『サンダーボール作戦』のタイトルを出し、ジェームズ・ボンドの行動はレイプだと指摘したフクナガ監督。

画像: 『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のジェームズ・ボンド

 問題意識を持つ監督は、シリーズの長い歴史と求められる変化のなかで、最新作におけるジェームズ・ボンドの描き方を丁寧に考えていったという。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、『Fleabag フリーバッグ』や『キリング・イヴ/Killing Eve』で知られる俳優で女性脚本家のフィービー・ウォーラー=ブリッジが脚本に参加。

 当初、ジェームズ・ボンドがより意識の高い人物として描かれる脚本が提出されたが、監督はそのアイディアを却下した。そこには、彼と、シリーズのプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリが当初から話していた考えがあったという。

 「ボンドを一夜にしてまったく異なる人物に変えることはできない。でももちろん、彼の生きる世界や、その世界で彼がどう生きなくてはいけないかを変えることは出来る。これは今の世界でスパイとして活動する白人男性の物語だ。しかし、(物語を改善することに対して)積極的な姿勢を見せて、女性たちを単に入れたというだけの存在以上にするための努力をしなくてはいけない」

 60年にわたって描かれてきたジェームズ・ボンドというキャラクターを、新たな世界のなかに描く。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、すでに、「007」というコードネームはラシャーナ・リンチが演じるノーミというキャラクターが引き継ぐことが明らかになっている。監督は本作でどのような世界、どのようなキャラクター像、そしてどのようなジェームズ・ボンドを描いたのだろうか。

 ちなみに、ジェームズ・ボンドを変えなくとも世界を変えるべきだという考えは、主演のダニエルも同意するところのよう。

 英Radio Timesにジェームズ・ボンドは女性が演じるべきかと質問されたダニエルは、「シンプルに、女性と黒人俳優のためのより良い役柄があるべきだ。もし女性のためにジェームズ・ボンドと同じくらい良い役があるのなら、なぜ女性がジェームズ・ボンドを演じなくてはならない?」と答え、ジェームズ・ボンドを変えるのではなく、業界が女性や黒人俳優のためにジェームズ・ボンドと同じくらい良い役を作っていくべきだとした。

(フロントロウ編集部)

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