ダニエル・クレイグ、『007 慰めの報酬』について
これまでに25作品が公開されてきた『007』シリーズにおいて、6代目ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグは、5作品に出演。ダニエルのシリーズデビュー作である『007 カジノ・ロワイヤル』は、新ジェームズ・ボンドの作品として厳しい目を向けられながらも大ヒットを記録し、彼は英国アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。
そのまま2作目の『007 慰めの報酬』もファンの期待に応える作品に仕上がってくるかと思いきや、2作目では一転して低い評価をされる結果に。
本作については、ストロベリー・フィールズを演じたジェマ・アータートンも後悔を口にしているが、ダニエルも苦い思いを抱えているよう。
そしてそこには、2007年から2008年にかけてアメリカで大規模発生した全米脚本家組合ストライキの影響があったよう。ドキュメンタリー映画『ジェームズ・ボンドとして』のなかで、彼がこんな言葉を口にした。
「脚本家たちのストライキがあったから。脚本はあったけど、完成していなかった。完成間際ではあった。映画は一応成立している。しかしそれは『カジノ・ロワイヤル』ではなく、そういう時にはいつだって…。あれは…、あれはまさにセカンド・アルバム症候群だよ。『カジノ』を超えることはできなかった…。そう言うのはいつだって簡単だ。もちろん、私たちは『カジノ・ロワイヤル』を超えたかった。しかし、分かるだろう…」
脚本に問題があった『007 慰めの報酬』
高い評価を得た1作目を超えたかったという思いを明かしたダニエル。しかし彼がセカンド・アルバム症候群というように、1作目が素晴らしい出来でも、2作目で失敗するということは、よくあること。さらにそれが、映画の要である脚本の進行に問題があった時にはなおさら。
『007』シリーズを長年にわたって手掛けてきたプロデューサーのバーバラ・ブロッコリも、脚本の完成度が映画の完成度に直接的に影響したと考えている様子を見せた。
「脚本がないまま撮影をスタートしたんです。決して良い考えではなかった。しかし、脚本が提出され、脚本家はギャラの小切手を受け取り、そしてその後プラカードを持って、スタジオの外でストライキをしていました。我々は窮地に立たされたわけです。私たちは物語を成立させるためにどうにかやっていくしかなかった。そして良くはならなかった」
しかし彼女は最後に、「あの映画を振り返り、やっぱり良い映画です」とコメントしており、イレギュラーな状況のなかで完成させた『慰めの報酬』について、自信も見せた。
(フロントロウ編集部)