※この記事には、映画『007 慰めの報酬』のネタバレが含まれます。
女性の描き方が長年問題視されている『007』シリーズ
1962年に映画第1作目が公開され、2021年に公開予定の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で25作目となる『007』シリーズは、スパイアクション映画の代名詞的作品といえる。英国の秘密情報部MI6のスパイであるジェームズ・ボンドが、その頭脳と肉体で敵を追い詰める様子は何十年にもわたってファンを魅了してきた。
一方で、大きな批判をされてきた点も。それはボンドガールの存在。ボンドの性的魅力を誇示するための立ち位置や、酷い方法で殺される展開、そして中年のボンドに対して非常に若い女性俳優を起用してきたことなどは問題視されてきた。また、ボンドガールという呼び方にも批判があり、現在ではボンドウーマンという言い方をする人もいる。
ジェマ・アータートンが後悔
1960年代から続いてきたシリーズとはいえ、6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグによる2作品目にあたる2008年公開の『007 慰めの報酬』では、ジェマ・アータートン演じるストロベリー・フィールズの存在が大きな批判を浴びた。
MI6のエージェントであるストロベリーは、ボンドを安ホテルに連れていくけれど彼がそれを気に入らず、高級ホテルへ移動。そこで2人は体の関係を持った。しかしその後、ストロベリーは命を落とす。
ストロベリーを演じたジェマはこの役を演じた当時について、英The Sunのインタビューで、「キャリアの初めの頃には本当に極貧だったから、働けて、生活費を稼げるだけで幸せだった。『慰めの報酬』(の仕事)を受けたことは今でも批判される。でも私は21歳で、学費のローンもあったし、それはボンド映画だった」と、貧困状態のなかでは仕方のない選択だったと振り返る。
また、21歳という若さでは、何が問題かも明確には理解していなかったという。しかし現在34歳となったジェマは、ストロベリーの行動や、アクション映画なかでエージェントという職業に就く女性として登場したストロベリーがハイヒールを履いていることなどは、女性の描き方として問題だったと後悔を口にした。
「でも年を重ねるにつれ、ボンドウーマンにはかなり多くの問題があると気がついた。ストロベリーは(ホテルで)ただノーと言うべきだった。本当に。そしてフラットシューズを履くべきだった」
『007』のこれから
また、ジェマは2020年9月にも、英The Telegraphのインタビューで「作品の中で何があったか、私は何をしたか、とくに覚えてない。でも、今ならあのような役は選ばないと分かる。彼女(ストロベリー)は面白くて可愛いけど、何もすることがなかった。彼女の物語はなかった」と、ボンドウーマンの描かれ方に意見していた。
一方で、最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』においては女性の描かれ方が変わったと、イヴ・マネーペニー役のナオミ・ハリスが口にしている。007というコードネームも、引退して活躍するジェームズ・ボンドに代わり、黒人女性俳優ラシャーナ・リンチが演じるキャラクターに受け継がれる。『007』シリーズがどのように変化を遂げていくのか、映画制作の力が問われている。(フロントロウ編集部)