国際ガールズ・デーを制定するために尽力した国際NGOのプラン・インターナショナルが、NHKの柳澤あゆみ記者を招待し、中東やアフリカの女の子たちが直面する「女性性器切除(FGM)」の問題を語った。日本人の視点から見る女性性器切除に関する様々な問題とは?(フロントロウ編集部)

女性性器切除とは?

 Female genital mutilationの頭文字をとってFGMとも呼ばれる女性性器切除は、その名のとおり、女性器を切除するもの。いまだに世界約30ヵ国で行なわれており、例えばソマリアに住む5歳から11歳の女の子で女性性器切除をされた割合は98%に達する。

 さらに、各国の移民コミュニティでも行なわれている可能性もあり、その人数は統計には入っていないという。

 そして女性性器切除は、大量出血や感染症を引き起こし、命を落とす女の子もいる。また、その後遺症は、身体的にも精神的にも残る。

当事者の声

 アフリカや中東に住む子供たちについて、どんなイメージを持っているだろうか? 柳澤記者は、現地に住むのは、“こそこそ話してクスクス笑うふつうの女の子たち”だと話す。一方で、紛争地の取材を通して、その影響を最も受けるのは女性や子供たちだと気がついたという。

 そんな柳澤記者が話を聞いた女性性器切除を受けた女の子は、自分の身に何が起こっているのか分からなかったと語った。

画像: 当事者の声

女性性器切除が無くならないのはなぜ?

 WHOからは、健康上のメリットは一切ないと発表されている女性性器切除は、日本人からすると、いまだに続いていることが不思議にも思える。

 しかし女性性器切除は、それが行なわれている国では「慣習」の1つ。柳澤記者は、その慣習が祖母や母親といった女性から、女の子たちへ受け継がれている現実を伝えた。

 自分より年上の女性が自分を守ってくれず、納得できない慣習を続けさせられる。そんな経験は、柳澤氏の話を聞いていた日本人女性の多くも、レベルは違えど経験があるように感じられた。

 そして年上の女性が慣習を受け継ごうとするところには、「のけ者にされる」「結婚できない」といった、さらに大きな社会全体の抑圧がある。柳澤記者が取材した地域は男性優位の社会だったとし、発言権や決定権が男性にある社会で男性が声をあげないことは、つまりその状況を支持することを意味すると指摘する。

画像: 女性性器切除が無くならないのはなぜ?

根絶までには別の問題も

 現地で活動するプラン・インターナショナルなどの様々な団体は、これからを変える子供たちへの教育だけでなく、地域の長老的存在の人物といった、権力を持つ立場の人々と対話の機会を設け、環境改善のために働きかけてきた。

 そういった努力の積み重ねもあり、女の子や家族が女性性器切除をしない選択をしたり、政府が女性性器切除を刑罰化したりする事例は増えてきている。一方で、刑罰化されたことで、これまではあからさまに行なわれてきたことが、隠れて行なわれるようになるといった問題も起こっている。

 そして、根絶までの新たな壁が、女性性器切除の医療化。

 これまで、女性性器切除を止めるべきだという理由の1つには、その不衛生な環境があった。麻酔をしないこともあれば、使用されるナイフも適切なものではなく、切除したあとにはハーブで止血していたという事例も。

 しかしそれに対し、女性性器切除を止めるのではなく、医療化するという動きがあることを柳澤記者は伝える。エジプトなどで起こっているという女性性器切除の医療化は、根絶までの新たな壁になっている。

画像: 根絶までには別の問題も

その国に住まない自分たちが口を出して良いの?

 女性性器切除は、子供と女性の人権侵害。一方で、その国で慣習となっていることを、他の国が一方的にやめるべきだと言えるのだろうか?

 しかし、女性性器切除が行なわれるのは子供に対してであり、まだ子供である本人に選択権はない。現地に住むファティマさんは、柳澤記者に女性性器切除について「嫌なものは嫌」だと話したそう。

 人が外部からの影響や強制を受けることなく、自分の身体に起こることを管理・決定する権利であるボディ・オートノミー(からだの自己決定権)という概念は、基本的人権の1つであり、幼い頃から子供たちに教える家庭が増えている。

 柳澤記者も、少なくとも、“自分の体のことを、自分で決める権利”は重要だと話した。

(フロントロウ編集部)

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