ゴールデン・グローブ賞のノミネーションが発表
アカデミー賞の前哨戦として名高く、アメリカのテレビ・映画界で非常に権威の高いアワードである第79回ゴールデン・グローブ賞のノミネーションが発表された。今年は監督賞に映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン、『ロスト・ドーター』のマギー・ギレンホールの2名の女性監督がノミネート。昨年は映画『ノマドランド』のクロエ・ジャオが同賞を受賞している。
また、主演男優賞にはマハーシャラ・アリ(映画『Swan Song』)、ウィル・スミス(映画『ドリームプラン』)、デンゼル・ワシントン(映画『TheTragedy of Macbeth』)の3名の黒人俳優がノミネート。
そしてドラマ部門の女優賞にはドラマ『POSE/ポーズ』に出演しているトランスジェンダーのMJ・ロドリゲスがノミネートし、毎年指摘されている多様性の低さを改善しようという試みがみられた。
また、先だって行なわれたヴェネチア国際映画祭などで高評価を得ている映画『スペンサー』の主演を務めたクリステン・スチュワートも主演女優賞にノミネートし、大きな注目を集めている。
疑惑と批判にまみれたゴールデン・グローブ賞
本アワードのノミネーション発表は毎年ノミネートされた俳優や監督らが感謝のコメントを発表して大盛り上がりするものだが、映画『ハウス・オブ・グッチ』で主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされたレディー・ガガをはじめ、今年の受賞候補は大半がそれをスルーした。
その理由は、昨年度に噴出したHFPAの人種差別や接待疑惑をはじめとしたさまざまな問題が尾を引いているため。
2021年3月に開催されたゴールデン・グローブ賞直前、約90名からなるHFPAに黒人会員が一人もいないことが米Los Angeles Timesによってスクープされただけでなく、ノミネート作品の接待疑惑や、人種に偏りがあるノミネーションなど、多くの問題・批判が沸き上がった。
これを受け、多くのハリウッドセレブは『#TimesUpGlobes』というハッシュタグと共にHFPAに変化を求めるメッセージを発信。さらに、ワーナー・メディアやAmazonスタジオ、Netflixは、HFPAは、HFPAが抜本的な改革を行わないかぎり『一緒に仕事はしない』とボイコットを表明。また、本アワードを毎年放送している米NBCも、2022年度の授賞式は放送しないと発表した。
さらに、トム・クルーズは今までに受賞したゴールデン・グローブ賞のトロフィーを3つ全て送り返し、スカーレット・ヨハンソンはHFPAを『性差別的』だとはっきり言い切った。
HFPAは団体の体質を改善?2022年度のノミネーションを発表
この問題を受け、HFPAは組織改革を宣言。前回のゴールデン・グローブ賞から約9か月で改革をしたと主張しており、6人の黒人ジャーナリストを含む21人の多様性に富んだ新会員を増やしたり、ダイバーシティ・アドバイザーを起用したりと、新たな試みを行なっていると発表している。
現状、HFPAの発表に対するハリウッドからの反応はなく、米NBCも2022年度の放送を取りやめにしたままだが、授賞式はいまだに2022年1月9日に設定されている。ちなみに、去年は新型コロナウイルス感染拡大のためにバーチャル開催となったが、今年はどのような式典になるのかについては発表されていない。
そんななか、2022年度ノミネーションが発表。リストはラッパーのスヌープ・ドッグによって淡々と読み上げられYouTubeにてライブ配信されたが、その際に彼が何度か名前の発音を間違えたことに対してネットは大笑いとなる、というエピソードがあった。
主要なノミネーションのリストは下記の通り。
映画部門
作品賞(ドラマ部門)
『ベルファスト(Belfast)』
『Coda コーダ あいのうた』
『DUNE/デューン 砂の惑星』
『ドリームプラン』
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
作品賞(ミュージカル/コメディ部門)
『シラノ』
『ドント・ルック・アップ』
『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』
『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』
『ウエスト・サイド・ストーリー』
監督賞
ケネス・ブラナー『ベルファスト(Belfast)』
ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
マギー・ギレンホール『ロスト・ドーター』
スティーヴン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』
主演女優賞(ドラマ部門)
ジェシカ・チャステイン(『タミー・フェイの瞳』)
オリヴィア・コールマン(『ロスト・ドーター』)
ニコール・キッドマン(『Being the Ricardos』)
レディー・ガガ(『ハウス・オブ・グッチ』)
クリステン・スチュワート(『スペンサー(Spencer)』)
主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)
マリオン・コティヤール(『アネット』)
アラナ・ハイム(『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』)
ジェニファー・ローレンス(『ドント・ルック・アップ』)
エマ・ストーン(『クルエラ』)
レイチェル・ゼグラー(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
助演女優賞
カトリーナ・バルフ(『ベルファスト(Belfast)』)
アリアナ・デボーズ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
キルスティン・ダンスト(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
アーンジャニュー・エリス(『ドリームプラン』)
ルース・ネッガ(『PASSING -白い黒人-』)
主演男優賞(ドラマ部門)
マハーシャラ・アリ(『Swan Song』)
ハビエル・バルデム(『Being the Ricardos』)
ベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
ウィル・スミス(『ドリームプラン』)
デンゼル・ワシントン(『The Tragedy of Macbeth』)
主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)
レオナルド・ディカプリオ(『ドント・ルック・アップ』)
ピーター・ディンクレイジ(『シラノ』)
アンドリュー・ガーフィールド(『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』)
クーパー・ホフマン、(『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』)
アンソニー・ラモス(『イン・ザ・ハイツ』)
助演男優賞
ベン・アフレック (『The Tender Bar』)
ジェイミー・ドーナン(『ベルファスト(Belfast)』)
キアラン・ハインズ(『ベルファスト(Belfast)』)
トロイ・コッツァー(『Coda コーダ あいのうた』)
コディ・スミット=マクフィー(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
外国語映画賞
『Compartment No.6』(フィンランド、ロシア、ドイツ、エストニア)
『ドライブ・マイ・カー』(日本)
『Hand of God -神の手が触れた日-』(イタリア)
『A Hero』(イラン、フランス)
『Parallel Mothers』(スペイン)
ドラマ部門
作品賞
『Lupin/ルパン』
『ザ・モーニングショー』
『POSE/ポーズ』
『イカゲーム』
『サクセッション』
作品賞(ミュージカル/コメディ部門)
『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』
『Hacks』
『マーダーズ・イン・ビルディング』
『レザベーション・ドックス(Reservation Dogs)』
『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』
作品賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』
『Impeachment: American Crime Story』
『メイドの手帖』
『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』
『The Underground Railroad』
女優賞
ウゾ・アドゥバ(『イン・トリートメント / セラピスト ブルック・テイラー』)
ジェニファー・アニストン(『ザ・モーニングショー』)
クリスティーン・バランスキー(『グッド・ファイト 華麗なる逆転』)
エリザベス・モス、(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)
MJ・ロドリゲス(『POSE/ポーズ』)
男優賞
ブライアン・コックス(『サクセッション』)
イ・ジョンジェ(『イカゲーム』)
ビリー・ポーター(『POSE/ポーズ』)
ジェレミー・ストロング(『サクセッション』)
オマール・シー(『Lupin/ルパン』)
女優賞(ミュージカル/コメディ部門)
ハンナ・エインビンダー(『Hacks』)
エル・ファニング(『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』)
イッサ・レイ(『インセキュア』)
トレイシー・エリス・ロス(『ブラッキッシュ』)
ジーン・スマート(『Hacks』)
女優賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
ジェシカ・チャステイン(『ある結婚の風景』)
シンシア・エリヴォ(『ジーニアス:アレサ』)
エリザベス・オルセン、(『ワンダヴィジョン』)
マーガレット・クアリー(『メイドの手帖』)
ケイト・ウィンスレット(『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』)
助演女優賞
ジェニファー・クーリッジ(『ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル』)
ケイトリン・デヴァー(『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』)
アンディ・マクダウェル(『メイドの手帖』)
サラ・スヌーク(『サクセッション』)
ハンナ・ワディンガム(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
男優賞(ミュージカル/コメディ部門)
アンソニー・アンダーソン(『ブラッキッシュ』)
ニコラス・ホルト(『『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』』)
スティーブ・マーティン(『マーダーズ・イン・ビルディング』)
マーティン・ショート(『マーダーズ・イン・ビルディング』)
ジェイソン・サダイキス(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
男優賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
ポール・ベタニー(『ワンダヴィジョン』)
オスカー・アイザック(『ある結婚の風景』)
マイケル・キートン(『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』)
ユアン・マクレガー(『HALSTON/ホルストン』)
タハール・ラヒム(『ザ・サーペント』)
助演男優賞
ビリー・クラダップ(『ザ・モーニングショー』)
キーラン・カルキン(『サクセッション』)
マーク・デュプラス(『ザ・モーニングショー』)
ブレット・ゴールドスタイン(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
オ・ヨンス(『イカゲーム』)
第79回ゴールデン・グローブ賞授賞式は2022年1月9日に開催予定。(フロントロウ編集部)