治療法が確立されていないフリードライヒ運動失調症を抱える女性が、病気と闘うために研究者になった。(フロントロウ編集部)

難病を抱える女性研究者

 アメリカに住むシャンドラ・トランサムは、フロリダ大学のパウエル遺伝子治療センターでゲノムと遺伝子について研究をする博士課程4年目の研究者。

 そんな彼女は、治療法が確立されていないフリードライヒ運動失調症を抱えている。

 フリードライヒ運動失調症とは、神経系を冒す遺伝性疾患で、筋肉の衰弱や言語障害や心臓疾患を引き起こす。シャンドラの脚に感覚は残っているそうだが、自宅で歩く時には補助器具を使ったり、壁沿いに歩いたりする必要があったそうで、過去に転んで腕を負傷。車いす生活を経験し、今でも家では車いすを使うという。外では補助器具やスクーターを使用し、車の運転はできるそうだが、すべて手で行なう運転方法も習得済み。話すことも困難になる時があるそう。

 その症状は9歳で出始め、12歳で病名を診断された彼女は、20代か30代までしか生きられないと見られている。シャンドラは米Peopleに、その思いをこう告げた。

 「私には選択肢がないんです。急がなければ。病気が進行すれば、私は運動機能を失います。だから、自分の名前を書くことができなければ、明白にアイディアを話すこともできない。学校に運転して行くこともできない。つまり、すべてのことを動かす能力を失う」


彼女の闘い

 シャンドラの両親は病名を診断された当時、彼女にその事実を明かさなかったという。しかし彼女は自分でリサーチをし、13歳で両親から病名を明かされた時には、その事実を分かっていたそう。

 医師を目指すこともできたが、治療法がある病気を治療するのではなく、治療法を探す必要があると考えたシャンドラは、研究者に。自分がフリードライヒ運動失調症を抱えていることも理由の1つだが、他の患者が治療法を待ち望む気持ちが理解できるからこそ、自分以外の患者のためにも研究をする責任を感じていると、彼女は話す。

 フリードライヒ運動失調症に関しては、合成遺伝子を使った治療法の研究が進められており、患者たちの大きな希望となっている。しかしすぐに治療法として確立しないと見られ、シャンドラには間に合わない。

 一方で、フリードライヒ運動失調症に関する遺伝子治療の研究は比較的進んでいるため、シャンドラは別の遺伝子に関する突然変異について研究している。彼女が勤務するパウエル遺伝子治療センターの主任によると、彼女の研究はフリードライヒ運動失調症にも貢献するものだという。

 そんな彼女の夢は、海に向かって砂浜を駆けていくことだという。

 「他の人がそれをしてるのを見かけるけど、映画のワンシーンみたいだから」

 そう話したシャンドラは、「科学の可能性について前向きに思っています」と、未来への姿勢を見せた。

(フロントロウ編集部)

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