※この記事には、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のネタバレが含まれます。
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』Qのシーンの意図
ダニエル・クレイグの最終作となった映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』では、ベン・ウィショー演じるQのセクシャリティについてサラっと触れられるシーンがあった。
そのシーンによると、Qは男性とデートをしているよう。男性像、女性像の描き方で保守的な側面があると指摘されてきた『007』シリーズにおいて、Qのセクシャリティがゲイ、もしくはバイセクシャルであると言及されたことは重要なポイントだが、その要素が深堀りされることがなかったことには懸念もあった。
このシーンに関する様々な意見のなかには、Qのデート相手についてはQが言及しただけで終わったため、保守的な国では簡単に削除され、なかったことに出来てしまうという指摘や、制作陣が多様性を入れなくてはいけないと考え、少し入れただけなのではないかという声がある。
しかし、そのことについて英The Guardianのインタビューで質問されたベンは、あのシーンはネガティブなものではなく、ポジティブなものだと感じていると明かした。
「スタジオに押しつけられたとは感じていません。そのような印象はありませんでした。良い思いから生まれたと思っています」
ベン・ウィショーの捉え方
自身もゲイであることを公表しているベンは、本作の公開後に、Qのセクシャリティについて反応してきたのは、彼の知人である脚本家のラッセル・T・デイヴィスだけであり、ポジティブなものだったとしたうえで、「多分、あの決断におけるいくつかの点は素晴らしくはなかったと認めます」と話す。
プロデューサーであるバーバラ・ブロッコリとのミーティングで、あのシーンのアイディアを聞いた時には、同様の懸念を抱いたそうだが、その後に出来上がった脚本を読み、自分の中で考えを巡らせ、それを受け入れる決断に至ったという。
「(インタビュアーの)あなたが話してくれたことを、私も感じたことを覚えています。『これをやっておいて、そしてその後は何もしないのか?』と思いました。たしか、それは満足のいくものではないと感じたことを覚えています。なぜか、この映画では誰とも議論しなかったんです。
もしかしたら、別のプロジェクトであれば、そうしていたかも?しかしこれはとても大きな作品ですから、疑問にあげるべきかどうかを何度も考えました。最終的に私はそうしなかった。書かれたものはこれなのだと受け入れました。そして、あのセリフを言った。そういうことなんです」
Qのシーンは大きな話題にならなかったが、それは、それだけあのシーンが自然だったからという可能性も大いにある。また、以前からQのセクシャリティはゲイだと感じていた観客も少なくはない。
全世界で公開されるような映像の制作では、クリエイティブな側面からビジネスの側面まで、様々な視点からのチェックが入ることになるが、ベン本人もシーンについて考えたうえで、脚本通りに演じることに決めたよう。
(フロントロウ編集部)