『ウエスト・サイド・ストーリー』のヘアは一流クリエイターが担当
巨匠スティーヴン・スピルバーグが監督を務め、現在全国でロードショー中の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』。
1957年にブロードウェイ・ミュージカルとして誕生し、1961年には映画化もされた不朽の名作『ウエスト・サイド物語』を50年ぶりに再び映画化した同作は、1950年代を舞台に時代に翻弄された若者たちの友情・対立・恋愛を描いたストーリーに引き込まれるだけでなく、まるでタイムスリップしたかのようなファッションやヘアメイクに浸れるのも魅力のひとつ。
なかでもヘアセットでは『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界観をよりリアルなものにするためのこだわりがたくさん。劇中のヘアは、映画『ジョーカー』でヘアを手掛けてアカデミー賞にノミネートされた経歴を持つケイ・ジョージウー氏が最高責任者を務め、メインキャラクターの性格や当時のトレンドなどを反映してつくられているという。
実際にどんなこだわりが詰め込まれているのか、一流ヘアスタイリストのジョージウー氏が米Popsugarのインタビューで明かした撮影時のヘアセットのこだわりをご紹介。
躍動感を出すために行きついた、意外なスタイリング剤
『ウエスト・サイド・ストーリー』のキャストのヘアをつくり上げるうえで最優先事項だったというのが、ヘアでダンスシーンの躍動感を演出すること。そのためにジョージウー氏がこだわったのが、あえて髪を固めないこと。
ミュージカル作品のヘアセットというと、激しくダンスをしても崩れないようにするのが大事なように思えるけれど、ジョージウー氏が今回こだわったのはその逆。ジョージウー氏は、「エネルギッシュで活気のあるダンスを生かすため、踊るときに髪の毛が動くことが重要だと考えました」と説明。
とはいえ、激しく髪が動けばカメラが止まるたびに修正が必要。そこで、動きが出せて修正もしやすいスタイリング方法を試行錯誤したそうで、その結果、最後に行き着いたのが水とローションのみを使うこと。そうすることで自然に揺れるニュアンスをキープしながら、素早く簡単に修正できたそう。
新旧のヘアセット技術をミックス
『ウエスト・サイド・ストーリー』のヘアをつくり上げるうえで、「リアルで自然に見えるようにしたかった」と話すジョージウー氏。だからこそ、実際に50年代当時のヘアセット技術を使うことにもこだわったそう。
ジョージウー氏は、「ウェットセッティングやピンカール、マルセルアイロンの使用など、50年代から60年代に主流だったテクニックをたくさん取り入れました」と説明。作品の舞台である50年代や映画のオリジナル版が公開された60年代のヘアセットの技術を多数取り入れたのだとか。またスタイリング製品でも、当時のトレンドだったアイテムが多く使われたそう。
でもすべて古いテクニックというわけでもないようで、最新の技術を使うことを決めたのは撮影途中の修正で使うテクニック。ジョージウー氏によると、途中の修正では素早さがカギであるため、最新のヘアアイロンなどのツールを使うようにしていたという。
オリジナル版のキャストにもヘアを相談
ヘアセットによってよりリアルな世界観をつくり上げようと試行錯誤するなかで、ジョージウー氏が助けを求めたというのが、俳優のリタ・モレノ。オリジナル版『ウエスト・サイド物語』にアニタ役で出演し、今回のリメイク版にも登場するリタと相談してヘアセットのアイデアを出したそう。
その理由についてジョージウー氏は、「リタはオリジナル版の撮影時のヘアセットの様子だけでなく、当時のリアルなトレンドもよく知る人物だったため、たくさんのことを教えてもらいました」と振り返った。
また当時のプエルトリコ系のコミュニティのリアルな様子をヘアで表現するため、1950年代の参考写真などを使った研究も行なったという。
映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を見るときには、プロがこだわったヘアセットにもぜひ注目してみて。(フロントロウ編集部)