アクションも魅力の『ザ・バットマン』
マット・リーヴス監督による『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が世界的大ヒットを記録中。公開からわずか2週間で世界興行収入が5億ドル(約550億円)に達し、バットマンやキャットウーマンから、ペンギン、リドラーまで、様々な興味深いキャラクターが登場した物語は高い評価を得ている。
そんな本作では観客の心を掴むアクションシーンも見どころの1つで、ロバート・アロンゾがスタントコーディネーターと第2班の監督を務めた。彼は、リーヴス監督による『猿の惑星:新世紀』や『猿の惑星:聖戦記』でも声をかけられていたそうだが、その時はスケジュールが合わず。しかしついに、『ザ・バットマン』でリーヴス監督作品に参加した。
ロバートは本作でのアクションについて、「バットマンの(動きの)目的は、キャットウーマン、ペンギン、リドラーなどの目的とは明確に区別できるようにしました。もちろん、それは事前にキャスト陣に戦闘スタイルを、トレーニングしなければいけないことを意味していました」と説明する。
1人1人の戦闘スタイルを確立するために、彼は主演のロバート・パティンソンにはこんなトレーニングを課したという。
「ロバートとの戦闘トレーニングの目標は、予測できるような動きを排除し、いかなる危険性があっても、接近戦での戦闘を高めることでした。そこで、FMA(フィリピーノ・マーシャル・アーツ)であるエスクリマ(素手、棒やナイフ、紐といった武器術を持つ武術)、カリ(剣術)、アーニス(棒術)、プンチャック・シラット(インドネシア、マレーシアの伝統武術)、ムエタイ、ジークンドー(ブルース・リーが開発した武術)、ボクシング、キックボクシングを訓練してもらいました。
もっとも、映画内では拳、エルボー、そして肘を使った戦闘で、さらに棒での訓練によって戦闘シーンのわずかな時間で何かを物を拾い上げて、それを武器にできるような、即興的に対応できる戦闘も教えました」
また、キャットウーマン役のゾーイ・クラヴィッツも様々なトレーニングを乗り越えていた。
「彼女のキャラクターは、他のキャラクターと距離を保つことで、魅力的な性格に感じました。そこで彼女の戦闘シーンのスタイルは、スピード、敏捷性、フットワーク、フェイントなどの動きに重きを置き、テコンドー、ハプキドー、カポエイラ、ボクシング、サバット、ムエタイを彼女に訓練しました」
彼は制作における監督のビジョンは、「観客がキャラクターの感情を通して全てのパンチ、キック、落下、打撃、衝突を、まるで感じ取れるようなアクションを生でリアルにすること」だったと明かす。
そして、それを踏まえて、「俳優陣の身体的なものだけでなく、それぞれのキャラクターの瞬間瞬間に持つ感情的な状態も踏まえてアクションをデザインしていきました。そして全てのキャラクターの動きには目的を持たせ、単にアクションを見せつけるためにやるようなアクションを避けました。そして、様々なキャラクターの個性を考慮に入れることで、キャラクターごとに異なるアクション・スタイルを設計し、戦闘シーン、車・バイクの運転、環境によっては即興的なアクションにも対応できているように訓練を高めることを決めました」と、当時の制作プロセスを語った。
最後に、監督について、「マット監督は共に仕事をするうえでとても素晴らしい人物で、彼はそれぞれのキャラクター、それぞれの瞬間やフレームをすごく気にかけて製作しています。特に彼の細部へのこだわりは素晴らしく、観客に都市ゴッサムとそのキャラクターが実際に存在することを信じさせられる非常に現実的な世界を作ることを目標に、常に突き進んでいました」と話し、その努力を称賛した。
(取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki 編集:フロントロウ編集部)