『ウエスト・サイド・ストーリー』でアカデミー賞
映画『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニータ役で、第94回アカデミー賞助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズ。有色人種のクィア女性がアカデミー賞の演技部門を受賞するのは史上初で、アリアナはキャリア初だけでなく、コミュニティ初の快挙を成し遂げた。
そんなアリアナは受賞スピーチで「芸術に自分の強さを見いだした、クィアな有色人種のアフロ・ラティーナ」である自分が夢を叶えられたことに触れ、「自分のアイデンティティを疑ったことのある人たち、グレーゾーンにいると感じている人たちへ、私たちの居場所は確かにあることを約束します」と、力強いメッセージを送った。
自分を「恥じた」高校時代の経験、現在はLGBTQ+プライドを啓もう
1991年にアメリカで誕生したアリアナは、歌と踊りの才能を活かして20代はミュージカルで活躍。2017年にはミュージカル『Summer: The Donna Summer Musical』でトニー賞にノミネートされブレイクし、その後、2020年にライアン・マーフィー制作の映画『ザ・プロム』で主人公の高校生カップルのひとりであるアリッサを演じて注目を浴びる。続けて、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』にアニータ役で抜擢。今後は、ソニーによるスパイダーマン・ユニバースの第4作目である映画『クレイヴン・ザ・ハンター』や、デュア・リパ出演でも話題を集めている映画『アーガイル』への出演が控えている。
イタリア系、プエルトリコ系、アフリカ系の血を受け継いでいることを明かしているアリアナは、現在はクィアであることをオープンにしているが、高校時代はクエスチョニング(※自身の性指向・性自認が決まっていないセクシュアリティ)をしていたことを、学校のプロム(卒業パーティー)からのこんなエピソードで英 Gay Timesに明かしている。
「(プロムには)親友のジョナサンと行きました。彼はストレートの白人男性です。彼とダンスをしていたら、私が前から片思いしていた女の子がやってきて、ダンスに誘われました。ジョナサンは『行ってこい、やってこい!』と言ってくれました。彼は当時私がクエスチョニングしていたことを知っていたので、背中を押してくれたんです。そうして踊りはじめたのですが、彼女と踊っているうちに、周りの視線に気づいたんです。その視線は良い視線ではありませんでした。私はすごくそれを意識しちゃって、顔が真っ赤になったのを覚えています。それで、その子から離れてしまったんです。自分を恥じました。とくに、何も言えなかったことに。でも、自分ではどうしようもなかったんです」
そんなつらい経験をしたアリアナだが、LGBTQ+の人々やアライが多く働いているブロードウェイで自身のアイデンティティに対する誇りを深めたと米Themで明かした。
「『これが私なの』と言える自由が与えられ、本当の自分を生きるチャンスを得られたのです。それは簡単なことではありませんし、お互いに本当に理解し合えないのが人間というものです。残念ながら、共感は人間の最初の本能ではありません。私はそれを受け入れました。なぜなら、私はひとつのものに限定される必要がないコミュニティに囲まれていたのですから」
恋人スー・マックーってどんな人?
そんなアリアナは、第94回アカデミー賞助演女優賞の受賞スピーチの中で「私の愛しい人、スー(My love Sue)」に感謝を述べた。このスーとは、アリアナが以前から交際しているスー・マックー(Sue Makkoo)のこと。
デザイナーでありコスチューム・ディレクターであるスーは、アリアナがトニー賞に初ノミネートされたミュージカル『Summer: The Donna Summer Musical』でアソシエイト・コスチューム・デザイナーを務めていた人物で、2人の出会いは2017年~2018年にアリアナが出演していたこのミュージカルだと言われている。
マンハッタン音楽院で教壇にも立っているスーは、恋人であるアリアナの受賞後にツーショットをSNSに載せて「あなたの夢は何ですか?彼女という存在に目を向けてくれたアカデミーに感謝します!私たちはみんな、人生を捧げるものに向かって行くべきです」とコメント。米Vanity Fairが開催したアフターパーティ―ではアリアナと共にカメラの前にも立ち、手をつないだり顔を寄せ合ったりと仲睦まじい姿を見せた。
(フロントロウ編集部)