複数の女性に性暴力を行なったことを告発され、それを認めているルイ・C・Kがグラミー賞を受賞。批判が相次いでいる。(フロントロウ編集部)

性暴力をふるったルイ・C・Kがグラミー賞受賞

 現地時間4月3日に開催された第64回グラミー賞で、2017年に5人の女性から性暴力を告発されたコメディアンのルイ・C・Kが最優秀コメディアルバム賞を受賞し、批判があがっている。

 ルイへの告発は、2017年にMeToo運動を全世界に波及させた元大物映画プロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインの性暴力を告発した米NY Timesの報道とともになされたもので、ルイは女性たちに自慰行為を見せつけたり、電話越しに自慰行為をしている音を聞かせたりした。そしてルイはその事実を認め、謝罪した。

 ルイは告発の直後は表舞台から遠ざかったが、2018年に復帰しており、去年の8月には全米を回るコメディツアーを発表した。しかも、彼は今回グラミー賞を受賞したアルバムのなかで、セクハラ告発に関する一連の出来事をジョークのネタにしている。

 米Deciderによると、ルイのジョークは、自分の性癖を世間に知られていないことはラッキーだと言うものや、女性の目の前で自慰行為をする時には意思を確認しろといったものなどがあり、最後には、「自慰行為が好きだ。ひとりでいるのが嫌いだ。それだけしか言えない。寂しくなる。みんなはどこだ?それはただ悲しい。仲間が欲しい。それを共有したい。俺はそれ(自慰行為)が上手いし。もしジャグリングが得意なら、暗闇でひとりでそれをしないだろう。仲間を集めて、感激させるだろう。まあいい。俺が言えるのはそれだけだ」と話した。

 彼は授賞式には参加せず、彼が受賞したことはテレビ放送もされなかったが、グラミー賞の公式ツイッターは彼の受賞を祝福している。グラミー賞受賞は彼にとって3度目だが、性暴力を認めて以降は初となる。

性暴力加害者への授与に批判の声

 彼からの性暴力被害を告発した女性の1人であるコメディアンのレベッカ・コリーは、米THRが「ルイ・C・Kが性的不当行為の疑惑以降初となるグラミー賞を受賞」とツイートしたことに対して、「性的搾取者がそれを認めている時、それは“疑惑”ではない。それは事実」と、報道側の意識に苦言を呈した。

 政治戦略家のアティマ・オマラは、「素晴らしい。ルイ・C・Kは何人もの女性を虐待したが、キャリアを続け、グラミー賞まで受賞した」と皮肉のこもったツイート。

 コラムニストのモイラ・ドネガンは、性被害を告発した女性のほうが社会的にも被害を受けやすいという問題を指摘した。

 「ルイ・C・Kが自分の自慰行為を見せつけ、さらにC・Kのマネージャーからは脅されたと言われている女性コメディアンたちのキャリアは、告発したせいで受けた差別・偏見から回復できたのだろうか。ルイ・C・K自身のキャリアは非常に良く回復したみたいだが」

ジャーナリストのデヴィッド・M・ペリーも、「同意なく女性たちの前で自慰行為をし、彼女たちのキャリアを脱線させたルイ・C・Kが、グラミー賞で最優秀コメディアルバム賞を受賞した」と、モイラと同様の指摘を含むツイートをした。

 ハーヴェイからの性暴力を告発した女性のうちの1人であるサラ・アン・マッセは、昨今よく使用される言葉であるキャンセル・カルチャー(※)を取り上げ、批判のコメントをツイートしている。

 ※ある人物が昔にした発言や行動が問題となり、SNS上でその人物の番組降板など“キャンセル”が叫ばれること。集団の声を使ってSNSを通して問題提起をすることは、これまで無視されてきた声や被害を明るみに出して加害者に責任を負わせる手段として有効。一方で近年、問題解決ではなく誹謗中傷することのみを目的とした行動も目につくようになってしまい問題となっている。サラの場合は、SNSのアクティヴィズムが持つ良い影響力を無視して「キャンセル・カルチャーは絶対悪」と批判する人に向けられていると理解できる。

 「“キャンセル・カルチャー”は相手を選り好みするみたいだね?そしてこの業界にありがとう。被害者のことなんか問題ないと、再三示してくれて」

 グラミー賞がルイの受賞を発表したツイートには、「セクハラや性的暴行について光を当てたからと言って、性暴力を告発されてる男性に賞を贈るわけ?」といった意見も寄せられている。

 グラミー賞受賞者は、主催団体であるレコーディング・アカデミーの投票会員の投票によって選ばれる。投票できる部門は会員によって異なるが、米Vanity Fairによると、投票会員は1万2,000人ほどだという。

 レコーディング・アカデミーのCEOは去年の11月に、個々人が自分の作品をノミネーションのために提出すること自体に制限はないと米The Wrapに伝えている。一方で、授賞式に招待するゲストはコントロールしているとしており、ルイが授賞式に出席しなかったのは、レコーディング・アカデミー側の判断によるともだと見られる。

(フロントロウ編集部)

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