カミラ・カベロが2022年4月8日にリリースしたソロとしてのサードアルバムとなる最新作『ファミリア』をフロントロウ編集部がレビュー。(フロントロウ編集部)

カミラ・カベロのアルバム『ファミリア』をレビュー

 自身のラテン系としてのルーツにトリビュートを捧げ、スペイン語で“家族”を意味するタイトルをつけた最新アルバム『Familia(ファミリア)』で、カミラ・カベロは家族や友達、恋人といった大切な人の前でしか見せたことがなかった、無防備なありのままの自分自身を晒け出している。

画像: カミラ・カベロのアルバム『ファミリア』をレビュー

 2019年12月に前作『ロマンス』をリリースして以降、カミラは新型コロナウイルスによるロックダウンに入る直前に“燃え尽き症候群”になっていたことを公表し、2021年11月には、およそ2年半にわたって交際してきた恋人ショーン・メンデスとの破局を報告した。『ファミリア』をリリースするまでにプライベートでは大変な時期を乗り越えたカミラだが、ソロでのサードアルバムとなる本作では、下を向くどころか、家族のように大切な人たちに支えられながら、その目は前を見据えている。彼女がオフィシャル・インタビューで明かしたところによれば、このアルバムでは、大切な人たちとお互いに支え合う「相互依存」の関係を祝福することを念頭に置いたという。

「皆と同じになれたらいいのに/でも私は誰とも違う」

 『ファミリア』というアルバムのタイトルを象徴するように、アルバムのアートワークでカミラが従姉妹を抱き締めていたり、全編スペイン語の楽曲「ラ・ブエナ・ビダ(La Buena Vida)」に父親のアレハンドロがバッキングボーカルで参加していたりと、自身の肉親も登場する本作で、カミラはありのままの思いを歌詞に綴る。SNSやインタビューなどでは、これまでにも自身のメンタルヘルスの問題について共有してきたカミラだが、音楽を通じてそうした精神面の不安を表現したのは、このアルバムが初めて。

 自身がデビューするきっかけとなったフィフス・ハーモニーの4人のメンバーとの関係にも触れたシングル「サイコフリーク(psychofreak)」では、「みんな昔の私が懐かしいって言う」「インスタでは『癒された』なんて書いてるけど」と、フィフス・ハーモニー時代を懐かしむ声への葛藤や、インスタのフィードに流れてくる華やかな写真と自分自身を比べて劣等感を感じずにはいられない、SNS時代ならではの悩みを抱えていることを打ち明ける。フィーチャリングで参加したウィローがそのハスキーな歌声で切実に歌い上げる、「皆と同じになれたらいいのに/でも私は誰とも違う」というフレーズからは、カミラが日常的に“自分は皆よりも劣っている”という感情を抱えていることが伝わってくる。 

 昔から日常的に不安を抱えてきたことを打ち明け、それに加えて、ショービズ界きっての“おしどりカップル”として知られていたショーンとの交際に終止符を打って一つの恋愛が終わりを迎えたカミラだが、それでも、彼女がこのアルバムの大部分を占める陽気なラテンのサウンドのように前を向けているのは、家族のように支え合える大切な存在がいるからに他ならない。

「怖がらないで身を委ねて 抱きしめてあげるから」

 スペイン語の楽曲も多く収録して自身のラテン系としての出自にトリビュートを捧げるなど、自身を形成してきたあらゆる存在を祝福するこのアルバムで、全編を通して自分のありのままを晒け出しているカミラ。中でも、ボーイフレンドを「トキシック・マスキュリニティ(Toxic Masculinity)」から解放しようと優しく寄り添う歌詞が歌われる「ボーイズ・ドント・クライ(Boys Don’t Cry)」は、大切な人との「相互依存」を最も直接的に表現した楽曲の1つと言える。

 カミラはこの楽曲で、「誰が言ったの 男の子は泣かないはずなんて」「あなたの苦しみを私に分けて 肩の重荷を軽くしてあげるから/怖がらないで身を委ねて 抱きしめてあげるから」と歌い上げ、日本語では「有害な男らしさ」や「男らしさの呪縛」とされている「トキシック・マスキュリニティ」からボーイフレンドを救い出そうと手を差し伸べている。ショーンのファンであれば、彼もメンタルヘルスの問題について積極的に声をあげてきたことをご存知だろうし、この曲を聴きながら、ショーンのことが頭によぎるという方もいるかもしれない。

 もちろん、このアルバムはカミラ&ショーンをカップルで推していたファンにとって、“2人の間に何が起きていたのか?”を推測できるようなものにもなっている。「あなたが必要 あなたはどこにいる?」(「ラ・ブエナ・ビダ(La Buena Vida)」)や「背が伸びた?/髪が長くなったわね/最後に会ってからタトゥーが増えた」(「クワイエット(Quiet)」)という歌詞や、ショーンとまだ交際中だった頃に書かれた「置いてかないで 今夜の私はあなたのものなのに/もう少しだけ まだ行かないで」(「ドント・ゴー・イェット(Don't Go Yet)」)という歌詞からは、カミラの中にショーンの存在が感じられるはず。

「人生ってそういうもの」

 けれど、アルバムを通して感じられるのは、カミラが恋の終わりを“これも人生”と吹っ切って、前に進もうとしているということ。「ラ・ブエナ・ビダ(La Buena Vida)」では、「私の20代が終わっちゃう/そんな人生は望んでない」と、破局によって人生設計が狂ってしまったことへの焦りも覗かせるカミラだが、自身のアイドルであるエド・シーランを迎えた「バン・バン(Bam Bam)」では、「Yeah 人生ってそういうもの/Yeah 愛する人に出会って/打ちのめされても/また自分の足で立てるようになる/それが人生」と、すっかり開き直り、ミュージックビデオでは家族のような存在である女友達と夜通しガールズナイトに興じる。

 カミラは、大切な人に自分の弱さを見せてお互いに支え合うことが“強さ”だということを知っている。そして、お互いに無防備になることで、辛い時期を乗り越えられるということも。カミラが自分の弱みもすべてを晒け出し、大切な人たちと支え合うことを祝福した『ファミリア』は、聴く人たちの不安な気持ちに家族のように寄り添い、最後には「人生ってそういうもの」と、ラテンのリズムで陽気に踊らせてくれるようなアルバムになっている。

 カミラ・カベロのサード・アルバム『ファミリア』は現在発売中。(フロントロウ編集部)

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